知恵蔵 「古畑任三郎」の解説
古畑任三郎
ストーリーは、まず犯人の犯行シーンが出てきて、後日その現場に古畑任三郎が到着し捜査を始めるというワンパターン。しかし、古畑任三郎が真相にたどり着くための手がかりが、シーンの中にあまりにもさりげなく盛り込まれているため、犯人が分かっているのにもかかわらず、謎解きのシーンになって初めて「ああ、それが決め手だったのか!」と、どんでん返しにも似た新鮮な驚きを感じる。この意外さが視聴者をテレビの前にくぎづけにし、マンネリを感じさせない斬新な推理ドラマへと仕上げた。犯人役を毎回、大物芸能人が務めたという点も高視聴率の理由で、大御所俳優、お笑い芸人、歌舞伎役者までもが「殺人犯」として古畑任三郎と対決した。
脇役陣もおおいに番組を盛り上げた。筆頭は、古畑任三郎の部下である今泉慎太郎(西村雅彦)。古畑にバカにされるほどのおとぼけぶり、天然ぶりで、物語にお笑いの要素を加えた。今泉慎太郎は、のちに古畑任三郎に匹敵するほどの人気キャラクターとなり、本編放送日の深夜、「巡査・今泉慎太郎」と称したショート番組が組まれたほど。今泉とは正反対の優秀な刑事、西園寺(石井正則)、古畑の事件になぜかいつも巻き込まれる花田(八嶋智人)も、ドラマが生んだユニーク脇役キャラクターだ。
古畑任三郎シリーズは、99年6月を最後にいったん幕を閉じたが、2006年の正月ドラマ「古畑任三郎ファイナル」として復活。これがシリーズ完結編となり、3日連続、長編単発ドラマとして放送された。共演者は、石坂浩二、イチロー、松嶋菜々子など。このファイナルをもって古畑任三郎は終了したが、08年6月、古畑任三郎の中学生時代を描いた「古畑中学生」が放送され、古畑任三郎の生い立ちが語られた。
(高野朋美 フリーライター / 2009年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報