日本大百科全書(ニッポニカ) 「台風業務実験」の意味・わかりやすい解説
台風業務実験
たいふうぎょうむじっけん
台風期にあたって各国が協力しあって、同時観測および情報交換を行ったシステム。トーペックス(TOPEX:Typhoon Operational Experiment)ともいう。これには日本、中国、韓国、フィリピン、タイ、マレーシア、ベトナム、香港(ホンコン)が参加し、WMO(世界気象機関)とESCAP(エスカップ)(アジア太平洋経済社会委員会)とが後援して1981~1983年の台風期に行われた。この内容は、(1)台風の解析および予警報、(2)洪水(こうずい)予警報、(3)防災および情報伝達、などである。(1)については、東京の気象庁本庁に設けた国際実験センターに参加各国から1、2名ずつの予報官が集まり、参加国に影響を与えそうな台風を選んで集中同時観測を参加国に指令し、それら各国と連絡をとりながら予警報を行った。この実験は、参加各国の観測施設、予報方法、通信システムの改善のきっかけとなった。気象の実務的国際共同実験がリアルタイムに行われたものとしては世界最初で画期的なことであった。
[安田敏明]