…しかし,江戸時代後期になると,唐獅子の神威ある王者の守護獣といった性格はうすれてゆき,ひたすらに怒りたける勇壮なる野獣性の象徴に転じていった。ことに浮世絵の発達にともなう刺青の流行につれて,鳶(とび)の者,火消,勇み肌職人,俠客らは,《水滸伝》の豪傑らのほかに唐獅子牡丹の文様をからだに刻みこむことがあった。この風俗は近代に入って,おもに博徒や極道者に引きつがれた。…
…高倉健は同じころ,《網走番外地》および上記《日本俠客伝》という2大ヒット・シリーズにも主演したわけであるが,ほぼ同じようなドラマ展開の《日本俠客伝》シリーズでは正業をもつ俠気の男に扮することが多いのに対し,このシリーズでは一貫してやくざを演じている。そのことの象徴が背中を彩る唐獅子牡丹の刺青で,ラストの乱闘のなか,刺青を血に染めた怒りの仁王立ちの姿が,〈死んでもらうぜ〉というせりふの迫力もあって,多くのファンを魅了した。また,この刺青にちなんだ主題歌《唐獅子牡丹》を高倉健が歌っていて,毎回,殴り込みに向かう〈花〉〈風〉コンビの道行シーンには必ず流れ,効果を高めるとともに,流行歌としてヒットした。…
※「唐獅子牡丹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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