改訂新版 世界大百科事典 「囊虫」の意味・わかりやすい解説
囊虫 (のうちゅう)
bladder worm
囊尾虫またはキスチケルクスcysticercusともいう。ジョウチュウ類のうちのムコウジョウチュウ(無鉤条虫=ウシジョウチュウ)やユウコウジョウチュウ(有鉤条虫=ブタジョウチュウ)などの幼虫。エンドウ豆くらいの大きさ。中間宿主であるウシやブタの体内で,前段階の幼虫である六鉤幼虫(鉤球子,オンコスフェラonchosphaeraともいう)が発育・変態したものである。ウシやブタがこれらのジョウチュウの虫卵を摂取すると,小腸内で六鉤幼虫が卵殻を脱出して,腸壁に侵入し,筋肉に移行する。六鉤幼虫は数ヵ月のうちに囊虫となる。囊虫を有する肉を加熱不十分なままにヒトが摂取すると,ヒトに感染する。囊虫は球状をしており,内部は液体に満たされ,表面の一点から内部に向かって盲管状の陥入がある。この陥入は,ジョウチュウの頭部が裏返しになって落ち込んでいるものである。肉とともに囊虫がヒトに摂取されると,小腸内で囊虫の陥入部が反転して頭部が飛び出す。後方にある尾囊はやがて失われ,頭部が成長して長大な成熟ジョウチュウになる。
執筆者:川口 啓明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報