改訂新版 世界大百科事典 「変形菌植物」の意味・わかりやすい解説
変形菌植物 (へんけいきんしょくぶつ)
slime mold
Myxomycota
光合成色素を欠き,腐生生活を行い,多くは固形物を摂取して細胞内消化をする生物の総称。生活史のうち栄養生活相のときは,細胞壁のない単核または多核のアメーバ状(これを変形体という)で自由生活をし,固型物をとる。植物細胞に寄生するものは体表から栄養物を吸収する。生殖相では,膜をかぶった胞子を作って気中に立ち上がり,カビ状の子実体を形成する。このようにアメーバ状の相,カビ状の相を備えるところから変形菌の名が生じた。以上の特徴のため,アメーバ状を欠く真菌門と区別され,生物5界説では原生動物などとともに原生生物界に含められる。かつては粘菌類と呼ばれた。現在,118属600種余が認められ,七つの綱に分類されている。ツノホコリカビ,フィザルム,ムラサキホコリカビ,ネコブカビなどが代表的である。純粋培養が困難であったが,最近は技術や機器の進歩により,多くの新しい知見が加わってきている。
執筆者:椿 啓介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報