ムラサキホコリカビ(その他表記)Stemonitis

改訂新版 世界大百科事典 「ムラサキホコリカビ」の意味・わかりやすい解説

ムラサキホコリカビ
Stemonitis

変形菌門,真正変形菌亜綱,ムラサキホコリカビ(ムラサキホコリ)目に含まれる変形菌の総称。ムラサキホコリともいう。日本では腐朽木などの上に発生し,きわめて普通に見られる。変形体は乳白色であるが,子実体は高さ5~20mm程度。胞子囊は長円柱形で先端は丸く,柄があり,紫褐色を呈するところから和名がついた。胞子囊が密に集合して大きな目だつコロニーを形成する。胞子は淡赤紫色で,表面にわずかな突起がある。純粋培養は困難であるとされている。代表種はS.splendens Rostafinsky。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムラサキホコリカビ」の意味・わかりやすい解説

ムラサキホコリカビ
むらさきほこりかび
[学] Stemonitis fusca

変形菌類のムラサキホコリカビ属の菌類をいう。変形体は白色で、複相核を多数含んでいる。成長すると朽ち木などの基物表面に現れて塊状になり、基物上に変形膜を沈積し、これを共通基盤として直立した有柄胞子嚢(のう)群を形成する。高さは1~1.5センチメートル、紫褐色の円柱形胞子嚢の直径は約0.45ミリメートル、黒い短柄の基部は変形膜につき、上端は胞子嚢の中央を走る柱軸へ続く。柱軸の周囲から伸びた黒い細毛体が網をつくり、その中を真正胞子が満たしている。

[寺川博典]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムラサキホコリカビ」の意味・わかりやすい解説

ムラサキホコリカビ(紫埃黴)
ムラサキホコリカビ
Stemonitis

変形菌類,外生胞子類ムラサキホコリカビ科。腐朽した材の上に発生し,木の幹,落ち葉,草の茎などの上にも出る。全世界に分布し,その種類は変種を含めて 10種以上が数えられる。子実体は円柱状,下部は黒色の柄となり,多数が束状に並んで変形体の乾燥したところに着生する。各子実体は柄に続く柱軸を有し,それから立体的に生じた分枝はさらに細かく分れて,その先が互いに結んで子実体の表面を形どる網目となる。子実体が成熟すると,その中に多数の紫褐色の胞子を生じ,軽くたたけば子実体は簡単に崩壊して胞子が飛散し,子実体の網目が残る。胞子は球形,表面に微小突起が密生している。日本ではしばしば S. spledensがマツ類の樹上に生じるのが知られている。

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