大法官(読み)だいほうかん(英語表記)Lord(or High) Chancellor

旺文社世界史事典 三訂版 「大法官」の解説

大法官
だいほうかん
Lord(or High) Chancellor

イギリス衡平 (こうへい) 法裁判所の長
普通は国璽 (こくじ) を託される。衡平法とは国王裁判所の運用する一般的慣習法としてのコモン−ロー(common law,普通法)の欠陥や厳格さを補正する法で,衡平法裁判所は14世紀のエドワード3世に始まり,1873年以降,高等裁判所の一部となった。現在の大法官は最高位裁判官で,上院議員を兼ねる。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の大法官の言及

【衡平法】より

…請願が増大すると,国王ないし国王評議会は国政の合間にこれらを処理することが事実上困難となり,14世紀ころには国王評議会の成員でもある国王の高官にその処理を委任するようになった。とりわけ,国王の秘書長であり,国王評議会の事実上の議長であり,かつ高位聖職者でもあった大法官Chancellorへの委任が,歴史的に見て重大であった。ここで扱われた請願には,コモン・ロー裁判所が管轄権を有していないが実質的に見て正義に反する結果を招いている事件と,管轄権はもつが,原告側の貧困とか,相手方の暴力・圧制あるいは役人や陪審の瀆職(とくしよく)による妨害などから,国王の特別恩寵を求めざるをえない事件とがあった。…

【コモン・ロー】より

…その際これら新裁判所は,当然のことながらコモン・ローやその手続にのっとらずに裁判を行った。この代表的なものが,国王評議会の有力成員である大法官Chancellorが担ったコモン・ローの補正としての衡平(法)および大法官府裁判所の起源である。後にはこの判決例も漸次集積し,コモン・ローとは別体系の一種の法,すなわち衡平法を形成するに至った(15世紀以後)。…

【裁判官】より


[外国の制度]
 (1)イギリス 裁判官は弁護士としての経験を積んだ者から任命され(法曹一元),昇進制度はない。裁判官の頂点に位する大法官Lord Chancellorは,国王が首相の推薦によって任命するが,その地位は他の大臣と同様であり,身分保障はない。大法官について,資格の定めはないが,バリスターbarrister―法廷弁護士の称号を有する者の中から,任命されるのが通例である。…

【大臣】より

… 議院内閣制の母国といわれるイギリスでは,今日大臣職は100を超えている。首相,各省の長たる省大臣Departmental Ministers,国璽尚書や枢密院議長のような伝統的な職に就く非省大臣Non‐Departmental Ministers,司法の責任者たる大法官Lord Chancellorその他,省大臣を補佐する担当大臣Minister of Stateや政務次官などに分類できる。このうち首相,省大臣,非省大臣,大法官によって通常は内閣が構成され,これらの職を総称して閣内相,他を閣外相と呼ぶ。…

※「大法官」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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