仙台、名古屋、福岡など全国8都市に設置、管内に支部が置かれている場合もある。主に第二審として地方裁判所や家庭裁判所の判決に対する控訴を扱う。裁判は原則として、3人の裁判官による合議体で審理する。刑事訴訟では一審の判断を事後的に審査する「事後審」とされる。選挙に関する行政訴訟や内乱罪などの刑事事件では第一審を担当する。
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憲法にいう下級裁判所のうち最上位にあり,最高裁判所のすぐ下に位置する裁判所で,地方裁判所で行われた民事,刑事の訴訟(第一審)の終局判決に対する控訴事件を主として取り扱う。東京,大阪,名古屋,広島,福岡,仙台,札幌,高松の8都市に設置されている。管轄区域内の別の都市に支部をもつ高等裁判所もあるが,支部は法律上は本庁の一部分とみなされる。高等裁判所は裁判所法(1947公布)を根拠として存在するが,同法の制定以前は現在の高等裁判所に相当する裁判所として控訴院が置かれていた。現在の憲法体制が司法権の権限範囲を以前より拡大していることから,高等裁判所の権限も控訴院に比べ広くなっている。
第一審の裁判所と最上位の裁判所の中間に控訴のための裁判所を置いて,裁判所体系を3段階に構成し,訴訟について三審制を採るのは,外国にもしばしばみられる例である。アメリカ合衆国の連邦裁判所体系ではUnited States Court of Appeals for the circuit,ドイツ連邦共和国ではOberlandesgericht,フランスではCour d'appel,イギリスではCourt of Appealが,日本の高等裁判所に相当するといってよい。しかし裁判所の体系は各国それぞれの特殊事情を如実に反映しており,イギリスのCourt of Appealは全国を通じて一つであるとか,ドイツのOberlandesgerichtは連邦の機関であり,第一審のLandgerichtが各邦(ラント)の機関であるのと異なるなど,日本の場合とすべて一律視することはできないところがある。日本の控訴院はフランスの方式を継受したものとされ,現在の高等裁判所もその伝統をいくぶんか保っていると考えられる。なお,外国の裁判所で,たとえばHigh Courtなどの名称をもつものが,日本語に訳して高等裁判所と表現されている例も見受けられるが,これは適訳とはいえない。
日本で高等裁判所の裁判権(管轄権)に属すると定められているのは,(1)民事訴訟事件,行政訴訟事件,刑事訴訟事件につき地方裁判所が下した第一審判決に対する控訴,(2)家庭裁判所で例外的に下されることがある判決に対する控訴,(3)刑事訴訟事件につき簡易裁判所が下した第一審判決に対する控訴,(4)民事訴訟事件,刑事訴訟事件,行政訴訟事件,家事審判事件に関し地方裁判所あるいは家庭裁判所が下す決定・命令に対する抗告,(5)刑事事件につき簡易裁判所が下す決定・命令に対する抗告,(6)簡易裁判所が民事訴訟事件につき第一審判決を下した場合の上告(その第一審判決に直接に上告が提起される場合と,まず地方裁判所に控訴を提起して控訴審判決が下され,それに対して上告がなされる場合とがある),(7)その他,がある。
高等裁判所は,さらに特別の事件については第一審となることもある。内乱罪に関する刑事事件のほか,公職選挙や当選の効力につき争う訴訟事件(公職選挙法203条等),地方公共団体でのリコールに関する訴訟事件(地方自治法85条等),職務執行命令訴訟事件などが,それである。さらに公正取引委員会の審決にかかる訴訟(独占禁止法85条等),特許庁の抗告審判の審決に対する訴訟(特許法178条等)その他,とくに東京高等裁判所を第一審として出訴するよう法律で定められている事件もある。
高等裁判所はこれら裁判事務のほかに,最高裁判所の委任を受けて裁判所規則を制定することがあり,また最高裁判所の監督に服しつつその高等裁判所および管内にある地方裁判所,家庭裁判所,簡易裁判所にかかる司法行政事務をする。高等裁判所の司法行政事務に関する最高で最終の意思決定は,その高等裁判所の長官を含む全裁判官をもって構成される裁判官会議の議による。また,高等裁判所の内部には庶務をつかさどるために事務局が置かれている。
高等裁判所において裁判官の職務を果たすのは高等裁判所長官および判事であるが,特例措置によって判事補も高等裁判所の裁判官の職にあてられることが例外的にありうる。裁判官以外の職員として,高等裁判所長官秘書官,裁判所調査官,裁判所書記官,裁判所事務官などがある。
高等裁判所の裁判は原則として3人の裁判官の合議体によって行われる。しかし内乱罪に関する刑事訴訟事件など特別の場合には5人の裁判官の合議体による。
高等裁判所の裁判官の大部分を占める判事の資格は,地方裁判所で裁判官となる判事のそれと等しいものである。これに対し最高裁判所の裁判官は最高裁判所判事であり,簡易裁判所の裁判官は簡易裁判所判事であって,裁判所の種類と裁判官の資格が固定的に対応している。このことから,地方裁判所と高等裁判所のみが専門法律家である職業裁判官によって占められた中枢的裁判所であるといえる。
→裁判所
執筆者:住吉 博
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憲法でいう下級裁判所のなかで最上級に位する裁判所(裁判所法2条・15条~22条)。単に高裁とも略称される。旧制度下の控訴院に相当し、1947年(昭和22)公布の裁判所法(昭和22年法律第59号)に拠(よ)って発足。2023年(令和5)時点で、東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松の8か所にあり、支部として、名古屋高裁の金沢支部、広島高裁の岡山支部・松江支部、福岡高裁の宮崎支部・那覇(なは)支部、仙台高裁の秋田支部の6か所がある。また、東京高裁には特別の支部として、知的財産高等裁判所が設置されている。
高等裁判所は、高等裁判所長官および相応な員数の判事からなるのが原則であり、これがさらに各高等裁判所内で合議体を構成する裁判官の組合せ(これを部という)に配属される。この部が裁判機関としての裁判所ということになる。このほか、各高等裁判所に、庶務をつかさどるため事務局が付置される。
高等裁判所が扱う事件には次のものがある。
(1)控訴事件(地方裁判所の第一審判決、家庭裁判所の判決および簡易裁判所の刑事に関する判決に対する控訴事件)
(2)抗告事件(地裁・家裁の決定・命令、簡裁の刑事に関する決定・命令に対する抗告)
(3)上告事件(刑事に関するものを除いて、地裁の第二審判決および簡裁の判決に対する上告)
(4)第一審事件(内乱罪等に関する刑事事件、選挙に関する行政訴訟など、とくに法律で高等裁判所へ出訴すべきものとされている事件)
高等裁判所が裁判をする場合には、原則として3人、例外的に5人(内乱罪に関する事件、独占禁止法に関する事件など)の合議体で行う。このうち1人が裁判長となる。
高等裁判所には最高裁判所の委任により民事訴訟規則、刑事訴訟規則などの規則制定権が与えられる。また、最高裁判所の監督のもとに、高等裁判所は司法行政(事務官等の人事など)上の権限を有し、裁判官会議の議によりこの司法行政事務を行う。裁判官会議は、高等裁判所長官を議長として、所属裁判官全員で組織される。
[本間義信 2024年2月16日]
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…それに応じて各国とも上位・下位の関係で何種類かの裁判所を設けている。日本では,最上位が最高裁判所,その下に高等裁判所,その下に同格分担の関係で地方裁判所と家庭裁判所があり,地方裁判所の下に簡易裁判所がある。地方裁判所と簡易裁判所は一面また分担の関係にあるともいえる。…
※「高等裁判所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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