大風の歌(読み)たいふうのうた

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大風の歌」の意味・わかりやすい解説

大風の歌
たいふうのうた

中国、漢の高祖劉邦(りゅうほう)の詩。項羽(こうう)を倒し統一国家を興した高祖は、淮南(わいなん)王黥布(げいふ)を平定しての帰途に、故郷の沛(はい)(江蘇(こうそ)省)に立ち寄り、親族友人を集めて大宴会を開いた。宴たけなわに高祖自ら筑(ちく)を鳴らし歌を歌い、童児120人に合唱させ、自ら舞った。句の中間に兮(けい)というリズムを整える字を挟む三句23字の短い楚歌(そか)風の詩で、勝利の喜びと得意の情に満ちている。「大風起こりて雲飛揚す、威は海内に加わりて故郷に帰る、安(いずく)んぞ猛士を得て四方を守らしめん」。『文選(もんぜん)』巻28にも収録。

[根岸政子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の大風の歌の言及

【楚歌】より

…項羽が漢の高祖と天下を争い,垓下(がいか)に包囲されたとき,包囲軍が〈四面楚歌〉したとあるように,元来は民衆的な流行歌謡であったと考えられるが,現在にのこるのは英雄や皇帝,皇族たちの作品とされるものが多い。項羽の〈垓下の歌〉,漢の高祖の〈大風の歌〉,戚夫人の〈永巷の歌〉〈舂歌(しようか)〉など,みな高ぶった感情を表現したものである。楚歌がつねに劇的な場面で作られたものとされていることは,その作者名には仮託のものが多く,演劇形式の文芸と結びついてこの一類の歌謡が発展したことを示唆しよう。…

【中国文学】より

…地方の俗謡とそのかえうたを含む。漢の高祖劉邦が作ったという〈大風(たいふう)の歌〉は彼の死後その祭りでうたわれたが,その曲は楚の地方の歌謡のふし(楚声)であった。やはり漢代の軍楽だったという〈短簫鐃歌(たんしようどうか)〉の数曲はおそらく北方中国の民族の歌謡であろう。…

※「大風の歌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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