日本大百科全書(ニッポニカ) 「天狗谷遺跡」の意味・わかりやすい解説
天狗谷遺跡
てんぐだにいせき
佐賀県西松浦郡有田町上白川の天狗谷にある江戸時代初期から後期にわたる磁器焼成の窯址(ようし)遺跡。1965年(昭和40)から70年にわたって6回の調査が行われた。狭い谷間に位置している有田町の市街地の中の上白川地区の東面する傾斜面の狭い地域に六基の窯が相重なるような状態で発見された。これらの窯はA、B(B1、B2)、C、D、Eと名づけられた。全部の窯が完全な形で発見されたわけではないが、A窯は全長53メートル、16室あった。重なりぐあいなどからみて、E、A、D、B(B1、B2)、Cの順で築造されたといわれる。熱残留磁気測定の結果、A窯は1615年(元和1)ごろ、C窯は1815年(文化12)ごろのものと判定された。遺物については、E窯の青磁鶴首瓶などは朝鮮風であり、A窯のものには中国の明(みん)末のものと同様のデザインがあり、B、C窯のものにはいわゆる伊万里(いまり)様式といわれる日本的意匠がみられるという。
[吉田章一郎]