朝日日本歴史人物事典 「奥留種徳」の解説
奥留種徳
江戸後期の天文方山路諧孝の手付(属吏)。山路と協力し,9年の歳月を費やして『西暦新編』を翻訳編纂した。この本はオランダ人ペイボの著述した天文書の日月の理論と日月食の部分だけを訳したもので,渋川景佑らの『新巧暦書』とともに天保改暦(1844年施行)の参考にされた。山路の序文には「爰に属吏奥留種徳と共に之を編集す」とみえる。『西暦新編』(10冊)は8冊が漢文体の訳文,2冊は算例である。この訳は実際は上司である山路ではなく,奥留の力によるところが大きいといわれ,そのためか後日,諧孝の子の金之丞は奥留夫人に全然頭があがらなかった話が,金之丞の弟の養女であった『久間孝子覚書』にある。
(内田正男)
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