日本大百科全書(ニッポニカ) 「山頂洞人」の意味・わかりやすい解説
山頂洞人
さんちょうどうじん
Upper cave man
中国、北京(ペキン)の南西42キロメートルの周口店(しゅうこうてん/チョウコウティエン)の竜骨(りゅうこつ)山山頂の洞穴から発見された新人化石人骨。上洞人ともよばれる。この洞穴は、多数の北京原人化石が発見された周口店遺跡第一地点の上方にあり、北斜面に開いている。1930年に裴文中(はいぶんちゅう)によって発見され、1933~34年に詳細に調査された。数多い動物化石、文化遺物が同所より伴出している。それには孔(あな)のあけられた動物犬歯や骨針なども含まれている。後期旧石器時代に属し、放射性炭素法によって1万8000年前と推定されている。10個体近いと考えられる人骨破片のうち、かなり完全な頭骨が3個ある。ワイデンライヒF. Weidenreichはこれらを原始的モンゴロイド、およびメラネシア人、エスキモーに似るものと考えたが、1961年呉新智はすべて古モンゴロイドを代表するものと分析した。その考えは今日広く支持され、モンゴロイド形成を論ずるうえで重要な資料とみなされている。原標本は1941年、太平洋戦争勃発(ぼっぱつ)時に北京原人標本とともに紛失した。現在は石膏(せっこう)模型標本のみが残っている。
[香原志勢]