新人(読み)しんじん(英語表記)neo-man

日本大百科全書(ニッポニカ)「新人」の解説

新人
しんじん
neo-man

人類進化を便宜的に4段階に分けた場合の最終段階の人類。新人類ともいう。これに属する人類の学名ホモ・サピエンス・サピエンスであり、前段階の旧人とは種を同じくするが、亜種を異にする。約3万年前、後期更新世(洪積世)、最後の氷期の第二亜氷期に出現し、今日に至っている。新人段階の人類としては今日地球上にあまねく分布する現生人類とそれに類似する化石現生人類のすべてが入る。

 化石現生人類として最初に発見された人骨は、1868年にフランスのクロマニョン出土のものがあげられるが、以来この類の人骨が多数発見されたため、これらはクロマニョン人とよばれている。クロマニョン人はヨーロッパから西アジア、北アフリカ一帯から発見されている。これに対しイタリアのグリマルディおよびフランスのシャンスラードで発見された人骨は、それぞれネグロイドおよびエスキモーに似ているとして一時期問題になったが、今日ではヨーロッパの化石現生人類の変異内にあるものとみられている。化石現生人類は世界各地から出土しており、著名なものとしては南アフリカのボスコプ、フロリスバッド、タンザニアのオルドワイ、中国の周口店(山頂洞人)、柳江、ジャワのワジャクなどがあげられ、日本の港川(みなとがわ)、浜北(はまきた)などの出土人骨もこれに属する。なお縄文時代の人骨とされる三ヶ日(みっかび)人なども新人のなかに入る。新人段階で、オーストラリアやアメリカ大陸にも人類は足跡を残すようになった。そのように広く分布するようになったため、地球各地のさまざまな気候に適応し、今日みるような変異をみせるようになったと思われる。

 新人すなわち現代人の特徴といえるが、大きな脳頭蓋(のうとうがい)に対し、そしゃく器の退縮が著しい。とくに下顎骨(かがくこつ)底部前端の退縮が遅れ、頤(おとがい)を形成するようになった。そのほか眉(まゆ)の上にそそり立つ秀でた額、発達した乳様突起も新人の特徴として重要である。なお新人の口、咽頭(いんとう)、喉頭(こうとう)における変化は発声器官として完成し、優れた音声言語をつくりだしたと考えられている。新人段階での進化的変化がごく小幅であるのに対し、彼らが担った文化は、後期旧石器、中石器、新石器、青銅器、鉄器時代と著しく発展しており、新人の文化的適応の幅の広さを示している。

[香原志勢]


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精選版 日本国語大辞典「新人」の解説

しん‐じん【新人】

[1] 〘名〙
① 新たに加入した人。その分野に新しく進出してきた人。また、新しい思想や才能を持った人。
※令義解(718)田「所有当年苗子。新人至日。依数給付」
※青年(1910‐11)〈森鴎外〉八「新人(シンジン)といふのが嫌ひで、わざわざ新しい人と云ってゐるのです」
② 新たに結婚した人。多く、新たにめとった妻をいう。新妻(にいづま)。新婦。
※読本・英草紙(1749)一「肩を拽き、足を地につけしめず、擁みて奥に引立て行き、新人(シンジン)の面前に引きすゑたり」 〔傅縡‐雑曲〕
③ 化石現生人類の総称。三万~一万年前のもので、後期旧石器時代の文化を担った。グリマルディ人、クロマニョン人など。また、これを直接の祖先とする現生の人類をいう。
[2] 明治三三年(一九〇〇)、海老名弾正によって創刊されたキリスト教の月刊評論誌。大正一五年(一九二六廃刊

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知恵蔵「新人」の解説

新人

およそ20万年前にアフリカで誕生し、世界中に分布したヒト属の1種で、私たちホモ・サピエンスのこと。旧人と比べると、脳容積はやや増加し(1300〜1600立方センチ)、頭は丸くなり、眼窩上隆起は目立たなくなった。咀嚼(そしゃく)器官の退化により、顔は華奢になって奥に引っ込んでいる。骨格は頑丈さが衰えたが、文化的な発達により環境適応力が強まり、急速に世界中に拡散したと考えられる。オーリニヤック型のような精密な剥片(はくへん)石器を作り、芸術活動や音声言語に必要な抽象能力を発達させた。それらが今日の文明を築く基になった。ホモ・サピエンス・イダルトゥ(Homo sapiens idaltu、長老)は、エチオピアで化石が発見され、2003年同定されたやや原始的な亜種。新人の起源に関する「出アフリカ説」の重要な証拠として注目されている。

(馬場悠男 国立科学博物館人類研究部長 / 2007年)

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百科事典マイペディア「新人」の解説

新人【しんじん】

新人類の略称。現生人類とも。学名ホモ・サピエンスHomo sapiens sapiens。約3万年前,後期更新世のウルム第1亜間氷期から現在にいたる間に地球上に生息した人類までを含むが,更新世の新人(後期旧石器時代人)は化石現生人類として区別される。猿人,原人,旧人とは形態などが異なり,化石現生人類のクロマニョン人シャンスラード人グリマルディ人などがある。
→関連項目明石原人化石人類旧人旧石器時代浜北人ホモ・ファーベル三ヶ日人港川人

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デジタル大辞泉「新人」の解説

しん‐じん【新人】

新しく加わった人。新しく登場した人。「新人を発掘する」「新人歓迎コンパ」「新人選手」
現在の人類と知能・身体がほぼ共通する人類。クロマニョン人など更新世後期の化石現生人類および現在の我々をふくむ人類の総称。ホモ‐サピエンス‐サピエンス。→猿人原人旧人2化石人類
キリスト教で、過去の罪悪を悔い改めて新しい信仰生活に入った人。

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旺文社世界史事典 三訂版「新人」の解説

新人
しんじん

現世人類の祖先とされる人類
更新世末に出現したと考えられる。

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世界大百科事典 第2版「新人」の解説

しんじん【新人】

人類進化の最終段階の人類をさす新人類neanthropic manの略称。現生人類modern manともいう。その形態特徴は,時代的に先行する猿人原人旧人段階の人類とは明らかに異なり,Homo sapiens sapiens(ホモは〈人〉,サピエンスは〈賢明な〉の意)という学名が与えられている。今から約3万年前,後期更新世のウルム第1亜間氷期から現在にいたる間に地球上に生息した人類は,すべて新人の範疇に入るが,更新世の新人,すなわち後期旧石器時代人は化石現生人類Homo sapiens fossilisと呼ばれ,それ以後の新人と区別されている。

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世界大百科事典内の新人の言及

【採集狩猟文化】より

…狩猟の対象とした動物も,ウシ,ウマ,シカ,トナカイ,サイなどの大型のものからネズミのような小動物まで多岐にわたった。 約3万5000年前以降の後期旧石器時代は,現代人とまったく同じ新人(ホモ・サピエンス・サピエンス)の時代である。人類の生活技術はこの時代に入って加速度的に発展した。…

【プレ・サピエンス】より

…新人の出現に関して古くからさまざまな考え方が出されているが,その一つにプレ・サピエンス説がある。この学説は,新人がネアンデルタール人とは別の系統から派生したとするもので,P.M.ブール(1913)以来,多くの人類学者によってさまざまな系統樹が提案されてきたが,これを集大成したのがフランスのバロアH.V.Vallois(1954)である。…

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