内科学 第10版 「循環器疾患」の解説
循環器疾患(ほかの疾患に伴う肝障害)
肝臓は全循環血漿量の約1/4が流入する血流の豊富な臓器であるため,急性循環不全は酸素欠乏による肝機能障害をきたしやすい.組織学的には,中心静脈周辺の巣状壊死,肝細胞の好酸性変性や水腫様変性,多核白血球の浸潤がみられる.肝血流が回復した際(再灌流時)にもフリーラジカルによる肝障害が加わる.静脈系のうっ滞により肝静脈圧の上昇を伴う場合には,中心静脈とその周囲の類洞からうっ血が始まる.この病態が長期間に及べば線維化をきたし,うっ血性肝硬変に至る症例も存在する.うっ血肝の特徴は赤紫色の腫大した肝臓,割面は小葉中心部が暗赤色,辺縁部が黄色化した状態で,いわゆる「ニクズク肝(nutmeg liver)」となる.急性循環不全では,AST,ALTの急激な上昇により高度の異常値に達するが,総ビリルビン値の上昇はまれである.うっ血性心不全では,AST優位の中程度の異常値と総ビリルビン値の軽度上昇がみられる.治療は,ともに循環不全の改善をはかることである.[西口修平]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報