精選版 日本国語大辞典 「憂き名」の意味・読み・例文・類語
うき‐な【憂名・浮名】
- 〘 名詞 〙
- ① 当人にとっていやなつらい評判。立てられたくないうわさ。「憂(う)き」から同音の「浮き」を連想し、「流す」「川」「涙」などが縁語としても使われた。
- [初出の実例]「忘るなといふに流るる涙河うきなをすすぐ瀬ともならなん〈平高遠妻〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)離別・一三三四)
- ② ( 浮名 ) 男女間の情事のうわさ。艷聞(えんぶん)。
- [初出の実例]「あはでうきなのなとり川」(出典:歌謡・閑吟集(1518))
憂き名の語誌
平安時代は「憂き名」で、「憂き名立つ」「憂き名取る」「憂き名漏り出づ」と言って、自身の恋が現われたり、捨てられて「人笑へ」になったりするのをなげく時の表現。室町末期に「憂き世」が「浮き世」の意を強めて享楽的な傾向に進むなかで、「憂き名」も艷聞の意の「浮き名」の意で用いられることが多くなっていった。