新羅坊(読み)しらぎぼう

改訂新版 世界大百科事典 「新羅坊」の意味・わかりやすい解説

新羅坊 (しらぎぼう)

朝鮮の統一新羅時代,中国にあった新羅人の居留地。三国統一を達成した新羅では,8世紀から9世紀にかけて唐にしきりに朝貢使節を派遣しただけでなく,唐に通交・移住する者が多かった。彼らが集団で居住した新羅坊は,東シナ海沿岸地方の楚州,徐州,登州などにあり,いずれも中国大陸と朝鮮半島とを結ぶ水路の要地にあたる。なかでも登州付近の文登県赤山村のものは,日本の天台僧,慈覚大師円仁が唐への旅の途上滞在し(839,845),その旅行記《入唐求法(につとうぐほう)巡礼行記》の詳しい記録によって知られる。当時,9世紀前半には国内の飢饉のため唐に流亡する新羅人も多く,また張保皋(ちようほこう)が東シナ海の海上権をにぎり貿易を独占して,その唐側の拠点の一つとして赤山がとりわけ繁栄した。そこには自治組織として勾当新羅所があって揔管が監督しており,張保皋の創建になるという仏教寺院,赤山院では夏冬の講会に集う新羅人は200人にのぼったという。また登州には新羅館があって行き交う使節団や留学生の利用に供された。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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