母集団の分布が未知母数θ∈Θを含むとき,R.A.フィッシャーにより次のような推定法が示され,最尤推定法と呼ばれている。大きさnのサンプリングに対する統計量X1,……,Xn の分布が確率密度g(θ,・)をもつとする。x1,……,xnを固定して,g(θ,x1,……,xn)をθの関数とみなしたとき,x1,……,xnに基づく尤度関数と呼び,
と尤度関数を最大ならしめるθ^が定まるとき,θ^(X1,……,Xn)を母数の推定量とする。すなわち,X1,……,Xnの実現値がx1,……,xnとなったとき,それを実現させる確率が最大となるようなθを母数の値とみなすことである。推定量θ^(X1,……,Xn)では不偏性や最小分散は一般には成立しないが,実用的な推定法の中で最良のものとなる場合が多い。例えば母集団分布がN(θ,1)(平均θ,分散1の正規分布)で,θ∈R1が未知母数のとき,θ^(x1,……,xn)=(x1+……+xn)/nとなる。
執筆者:西尾 真喜子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報