森しげ(読み)もり・しげ

朝日日本歴史人物事典 「森しげ」の解説

森しげ

没年:昭和11.4.18(1936)
生年:明治13.5.3(1880)
明治時代の小説家,森鴎外の妻。大審院判事荒木博臣の長女。明治屋渡辺勝太郎に嫁いだのち,明治35(1902)年に,同じく離婚経験を持つ鴎外と再婚。鴎外は「半日」に,自分の妻と母の確執を描いているが,その問題を切り抜けるために妻のしげに創作を勧める。以来,42~45年まで『スバル』や『青鞜』に,結婚や出産など,女性でなければ切り開けない分野の作品を数十編,思い切った筆致で描破。「あだ花」(1910)では愛,性にまだ未熟な幼妻を,「波瀾」(1909)では心身ともに成熟し夫が妊娠を避けている事実まで見抜く妻を,2度の新婚体験を基に描き,見合い結婚の内実や女の成長を浮きぼりにする。創作集に『あだ花』(1910)がある。

(長谷川啓)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報