化学辞典 第2版 「水平化効果」の解説
水平化効果
スイヘイカコウカ
leveling effect
両性溶媒である水のなかで,もっとも強い酸はオキソニウムイオン(H3O+)であり,もっとも強い塩基は水酸化物イオン(OH-)である.水のなかで完全にイオン化するHClO4,HCl,HNO3のような強酸のプロトンは完全に水に移り,オキソニウムイオンを生じて,同じ強さの酸としての性質を示し,その強弱を区別することができない.一方,完全に電離する強塩基はすべてOH-を生じて,同じ強さの塩基としての性質を示し,その強弱を区別することができない.このような現象を酸塩基の水平化効果という.氷酢酸HOCOCH3を溶媒とした場合は,溶液中で存在するもっとも強い酸はH2OCOCH3+であり,氷酢酸中では,前記の3種類の酸は完全にはイオン化せず,その強さを区別することができる.しかし,氷酢酸中で塩基として作用する脂肪族アミンや芳香族アミンは氷酢酸中では完全にイオン化し,塩基としての強さは,この溶媒中で存在しうるもっとも強い塩基である酢酸イオンの強さに水平化され,その強弱を区別することはできない.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報