洞窟壁画(読み)どうくつへきが

山川 世界史小辞典 改訂新版 「洞窟壁画」の解説

洞窟壁画(どうくつへきが)

古くは旧石器時代後期の石灰岩洞窟があり,洞窟の奥部は暗く呪術的信仰の聖所であったために,壁面を利用して野牛,馬,鹿,ヤギ,ライオン,洞熊(ほらぐま)などの動物が写実的に描かれた。スペインの北部,カンタブリア地方アルタミラ,フランス西南部のラスコーなどが有名で,フランコ・カンタブリア芸術の大きな部分を占めている。他にニオー,フォン・ド・ゴームトロワ・フレール,コンバレルなどフランス側とスペインで多くの例が知られる。さらに洞窟絵画に関係ある岩壁絵画は東スペインから北アフリカにも分布し,カプサ美術(カプサ文化)の名で知られる。赤,黒,褐,黄などの多彩画で,狩猟舞踊,闘争などを描いている。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の洞窟壁画の言及

【絵画】より

…ルネサンス期に,遠近法や明暗法などの新しい表現技法が発達したのも,写実的表現への欲求に基づくところが大きいし,抽象絵画を大きく発展させた20世紀においても,ポップ・アートやスーパーリアリズムなどに見られるように,現実世界の再現,ないしは導入は,絵画の重要な手段となっている。 現在知られている最も古い絵画作品は,フランスのラスコーやスペインのアルタミラに残る旧石器時代の洞窟壁画(洞窟美術)であるが,2万年ないし4万年前にさかのぼると考えられるこれらの壁画に,すでにウシやウマやシカの生き生きとした姿がとらえられている。これらの壁画は,単なる装飾や鑑賞用のものではなく,おそらく狩りの獲物の豊饒祈願といった呪術的意味がこめられていたと考えられるが,その呪術の効果を期待するためには,獲物の種類をはっきりと特定すること,すなわち,ウシやウマの姿をそれらしく再現することが必要だったのである。…

※「洞窟壁画」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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