カプサ文化(読み)かぷさぶんか(英語表記)Capsien

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カプサ文化」の意味・わかりやすい解説

カプサ文化
かぷさぶんか
Capsien

アフリカチュニジアのガフサGafsa(古名カプサ)近くにあるエルメクタ遺跡を標準遺跡とする北アフリカの晩期旧石器時代文化。石器、貝殻、骨が混在した貝塚からなる遺跡が多い。とくにカタツムリの貝殻が目をひく場合が多い。しかし、大形獣の骨は少なく、狩猟はなされなかったようである。日常生活において礫(れき)を焼いて熱を利用したことを示す焼礫を多数出土する。後期旧石器時代と同じ大型の石器とともに多くの細石器が知られる。小さな厚い錐(きり)はダチョウ卵殻装身具に加工する工具であった。

 典型的カプサ文化は紀元前九千年紀をさかのぼらず、細石器が多くなると後期カプサ文化とよばれ(前六千~前五千年紀)、その分布は広がる。しかし、海岸部にはカプサ文化は至らず、海岸部には、併行してイベリアマウル文化があった。前四千年紀には土器が認められ、カプサ文化系新石器時代文化とよばれる。ケニアにも類似した石器が出土するが、つねに土器を伴い、別の文化として区別される。

山中一郎

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カプサ文化」の意味・わかりやすい解説

カプサ文化
カプサぶんか
Capsian culture

アフリカの中石器文化。カプサ文化と呼ばれる文化はアフリカには2つある。いずれも石刃を原材として,ナイフ形石器,刻器,幾何学形細石器主体とする文化である。一つは北アフリカのチュニジアを中心として分布しているもので,この文化の幾何学形細石器は最も美しいものとされている。この文化はかたつむりによる貝塚をもっている。ほぼ同時期にマグレブの地中海沿岸地帯にはオラン文化 (イベロ・マウル文化) が分布している。オラン文化は基本的性格はカプサ文化と同一であるが,幾何学形細石器がみられるのが大きな特色である。もう一つは東アフリカのケニアを中心に分布しているもので,ケニア=カプサ文化と呼ばれている。この文化は大型のナイフ形石器が主体となり,細石器も伴っている。この両者は現状ではまったく関係がないと考えられている。アフリカ大陸では,石刃を原材とする文化は伝統がなく,両文化の起源はいろいろの説が出されているが,定説はまだない。時期については中石器時代に属するとされている。

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