改訂新版 世界大百科事典 「ニオー」の意味・わかりやすい解説
ニオー
Niaux
フランス南西部,アリエージュ県にある村。人口約200。後期旧石器時代の洞窟壁画遺跡がある。洞窟は,標高1190mの石灰岩の山脈を横に貫通して,二つの谷を連絡する巨大なもので,ニオーに面した洞窟をニオー洞窟,山をへだてたユッサUssat側のものをロンブリーブLombrives洞窟という。両洞窟はニオー洞窟の入口から1400m奥にある大きな池によって隔てられている。ニオー洞窟の壁画は1906年にH.ブルイユとカルタイヤックÉ.Cartailhacによって調査され,旧石器時代のものであることが明らかにされた。壁画は入口から770mの〈黒の部屋〉に集中し,ビゾン,ヤギ,馬などが黒色の力強い線や平塗りで写実的に描かれている。いずれもマドレーヌ期(マドレーヌ文化)のものである。ビゾンの多くは身体に矢が刺さっており,これは殺害の呪術に関連する。また2尾のマスの刻画や若干の抽象図形が見られる。1970年代に支洞から新たに若干の彩画が見いだされた。
執筆者:木村 重信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報