改訂新版 世界大百科事典 「フォンドゴーム」の意味・わかりやすい解説
フォン・ド・ゴーム
Font-de-Gaume
フランス南西部,ドルドーニュ県にある旧石器時代の洞窟壁画遣跡。ブーヌBeune川に沿う,長さ124mの洞窟で,壁画は入口から64mの所から始まる。1901年にブルイユとペイロニによって調査され,旧石器時代美術発見の端緒となった。80頭のビゾンのほか,馬,マンモス,鹿,牛,トナカイ,ヤギ,陥穽(かんせい)を表す図形,手形などが彩画および刻画で表されている。洞窟壁画にはまれにしか表れないマンモスやトナカイが比較的多いことと,彩画・刻画併用の動物像が多いことが特色である。また他の洞窟壁画と同様,岩盤の隆起や凹凸がうまく利用されて,形象に浮彫的な効果を与えている。古い絵の上に新しい絵を重ねて描くという重ねがきが一般的で,ブルイユは時期を異にする六つの時代に描かれたことを明らかにした。最上層には赤,黒,褐色による多彩画やひじょうに繊細な浅い彫りの線刻画があり,これらはマドレーヌ文化後期に属する。
執筆者:木村 重信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報