フランス南西部,ドルドーニュDordogne県モンティニャックMontignac村の南方にある旧石器時代の洞窟遺跡。1940年土地の少年たちによって発見された。洞窟は主洞(長さ15.5m,幅9m),奥洞(長さ30m,幅0.5~3m),主洞から通路を経て右に分岐する〈後陣〉(直径4mの円形),〈身廊〉(長さ25m,幅1~3m),〈井戸(竪坑)〉(井戸のように5m落ちこんだところ)と名づけられる支洞の3部分からなる。最大5.5mの大牛など,約200点の形象が壁や天井に描き刻まれ,保存状態は良好である。馬が最も多く,ついで牛,シカ,ビゾンが多い。ほかに猫,サイ,オオカミ,熊,鳥,架空動物,人物やわな図形などが見られる。大部分の形象がマドレーヌ期に属し,大別すると次の四つの時期に分けられる。(1)主洞の架空動物や奥洞のヤギのような輪郭線だけの動物像と,奥洞のシカのような単色画。(2)身体の要所に黒色を入れた2色画の大部分。(3)陰影や明暗を巧みに示す単色画や,黄,赤,黒,褐色など,2色以上の絵具をまぜたり塗り分けたりした多色画。(4)〈後陣〉の線刻画の大部分。
旧石器時代の洞窟壁画は,雌雄一対としてあらわされる以外,すべて単独像であるが,〈井戸〉には例外的に構図があらわれる。すなわち,ビゾンは尻から腹に槍を突き刺されて内臓を露出し,後ろをふりむいて尾をはねる。その前に,斜めに倒れた人物が見られ,頭が小さくて鳥のようなくちばしをもつ。その足もとに小さな鉤つきの棒があるが,これは投槍器であろう。その左に,先端に鳥を刻んだ棒がある。この絵については,狩猟の光景をあらわすとか,呪術場面であるとかの議論がある。〈井戸〉から発見された木炭の炭素14法による測定値は1万5516±900年(1949測定)であった。なお,ラスコーの洞窟には人間が居住した形跡はなく,壁画を描き,それを呪術的に利用するためにのみ用いられたと考えられている。現在は剝落が激しいため公開されていない。
執筆者:木村 重信
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オーリニャック文化最末期(ブロイの説)あるいはマドレーヌ文化期に属すといわれる洞窟遺跡。1940年の発見。フランス西南部,ドルドーニュ県モンティニャック町近くにある。長楕円形の主室から奥の天井には,牛,馬,鹿などの絵画が赤,黒,黄色で描かれている。動物は主に側面観で,なかには鳥頭の人物もあり,呪術師ではないかと考えられている。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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