日本大百科全書(ニッポニカ) 「浮線綾文」の意味・わかりやすい解説
浮線綾文
ふせんりょうもん
もっとも代表的な有職(ゆうそく)模様。形式は大形の丸文で、内部を4分割し、爪(つめ)形の花文(かもん)を四つ充填(じゅうてん)している。花文の種類によって、浮線菊、浮線藤などと区別することもある。臥蝶(ふせちょう)文は、花文のかわりに胡蝶(こちょう)をモチーフに使ったもので、その名称は浮線蝶からの転化と考えられる。なお浮線綾文は元来、浮織(うきおり)の綾(あや)の模様、ないしは浮織の綾によく使用される模様という意味であろう。奈良時代に流行した唐花文が平安時代に和風化され、この模様が生まれたものと思われる。平安時代以後、狩衣(かりぎぬ)、童直衣(わらわのうし)、奴袴(やっこばかま)などに用いられた模様である。
[村元雄]