広義には,織糸を部分的に地組織から浮かせて文様を織りだす織物技法,またはその技法によって織られた紋織物をいう。最も素朴なかたちとしては,平織や綾織の経(たて)あるいは緯(ぬき)の地糸のいずれかを地組織から浮かせて文様をあらわす方法があるが,地糸とは別に紋糸を加え,これを浮織にして多彩な文様を織りだすこともできる。例えば今日,〈花織〉〈博多織〉と呼ばれるものは,前者は紋緯糸による緯の浮紋織,後者は紋経糸による経の浮紋織である。こうした浮織は簡単ないざり機によっても複雑な織文様をあらわすことが可能である。今日最も素朴な織物の技術が伝承されているインドネシアの島々において,こうした浮織による紋織物が盛んに製作されている。これらはたいがい平織の地に各種の紋緯が加えられていくものであるが,とくに経糸を浮かせる経浮織はスンバ島のものがよく知られる。またインドでも金銀糸を交えた高価なサリー用の布が浮織によって作られている。しかし狭義に〈浮織〉あるいは〈浮織物〉という場合には有職(ゆうそく)織物の浮織物を示す場合が多く,これは固織物(綾地綾文の綾織物)に対し,一般に地組織を経3枚綾とし,異色の絵緯(紋緯)糸で文様を浮かせて織りあらわしたものをいう。文様が立体感をもち,重厚でしかも華やかな感じがあることから,装束の袍(ほう),表袴,指貫(さしぬき),狩衣(かりぎぬ),唐衣(からぎぬ)等に広く用いられている。
執筆者:小笠原 小枝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
… 生産体制の変貌や国風文化の勃興は,必然的に織物の内容にも変化をもたらした。たとえば綾は前代に中心をなした四枚綾から,3枚,6枚の組織を主体とするようになり,地を三枚綾,文を六枚綾とした固地(かたじ)綾や,地を三枚綾とし緯を浮かして文様を織り出した浮文綾,平地に色の異なる絵緯(えぬき)を浮かして文様を織り出した浮織物,あるいは文様も共色で織った浮織物にさらに別の色の絵緯をもって異なった文様を縫取り風に織り出した二陪(ふたえ)(二重)織物などが新たに考案された。また綟り織物には,従来の2本もじれにさらに1本を加えて3本の経糸をもじらせた3本もじれの紗や,隣りあう経糸のもじれをたがいに反対にした,いわゆる対綟(むかいもじれ)(観音綟)が出現したほか,紗の組織と平組織とを組み合わせて地を紗とし,文を平織で表した顕紋紗,紗の組織を利用した特殊な変化組織である縠織(こめおり)なども考案された。…
※「浮織」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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