日本大百科全書(ニッポニカ) 「淡水コケムシ」の意味・わかりやすい解説
淡水コケムシ
たんすいこけむし
触手動物門苔虫綱(こけむしこう)掩喉(えんこう)亜綱の全種と裸喉亜綱(らこうあこう)櫛口目(しっこうもく)の一部の種を含む淡水にすむコケムシ類の総称。池、沼、湖などの水生植物の茎や葉、あるいは底に沈んだ木の枝や石などに付着して塊状、マット状、枝状などの群体をつくる。海産のコケムシ類に比べてはるかに種類数は少なく、世界各地より全部で数十種が知られているにすぎない。
掩喉亜綱の仲間はすべて淡水にすみ、日本からはアユミコケムシ、オオマリコケムシ、ヒメテンコケムシなどが知られている。海産のほかのグループとは形態的に次の点が異なる。(1)触手数が多い(17~106本)。(2)触手冠が馬蹄(ばてい)形をしている。(3)口上突起をもつ。(4)休芽をつくる。(5)虫室壁は寒天質を含む場合が多い。以上のうち(1)(2)(3)の形質によって、掩喉類は苔虫綱のなかでも原始的なグループと考えられている。
櫛口類の仲間で淡水にすむのは10種に満たない。日本にはチャミドロコケムシPaludicella articulataが各地に分布している。櫛口類は触手数が少なく(8~20本)、触手冠が円形であることから掩喉類と容易に区別できる。
[馬渡峻輔]