生物多様性オフセット(読み)せいぶつたようせいおふせっと

日本大百科全書(ニッポニカ)「生物多様性オフセット」の解説

生物多様性オフセット
せいぶつたようせいおふせっと

開発で破壊された生態系を定量評価し、別の場所の自然保護や生態系復元で埋め合わせる概念オフセットoffsetは相殺代償といった意味で、鉱山開発や森林伐採を進めるかわりに、別の山林や湿地などを保護・復元してほぼ近い価値の生態系を守る例が多い。世界193か国・地域が参加する生物多様性条約は、生物多様性オフセットを民間資金を使った生態系保全を促す仕組みの一つと位置づけている。国連環境計画(UNEP)や多国籍企業などでつくる研究会「ビジネスと生物多様性オフセットBusiness and Biodiversity Offset Program」(BBOP)がオフセット手法の世界標準づくりを進めており、そのノウハウの取得は企業の国際展開にとって不可欠になるとみられている。

 1950年代のアメリカで導入された、野生生物への悪影響緩和を求める代償ミティゲーションCompensatory Mitigationという取り組みが起源で、開発事業の中止や計画変更でも対応しきれない生態系の破壊を、別の生態系復元で相殺するのが基本的考え方。生態系破壊と復元を全体でプラスマイナスゼロにするノーネットロスNo Net LossやプラスにするネットゲインNet Gainを目標とする。

 企業の自主的相殺が基本であるが、アメリカやヨーロッパ諸国、オーストラリアなどは法律でオフセットを制度化している。生態系を保全した場合、その価値を売買できる証券(クレジット)を発行し、別の地域を開発する企業へ売る手法がとられている。すでにアメリカでは証券取引市場(2008年の市場規模3000億円)が成立している。

 排出した温暖化ガスを、別の場所で吸収・削減して排出分を相殺するカーボンオフセットと類似の概念だが、生態系の定量的評価がむずかしく、生息地評価手法Habitat Evaluation Process(HEP)とよばれる定量評価法の確立が課題となっている。

[編集部]

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デジタル大辞泉「生物多様性オフセット」の解説

せいぶつたようせい‐オフセット〔セイブツタヤウセイ‐〕【生物多様性オフセット】

開発事業などの人間活動によって生物多様性に与えるの影響を、別の場所で生態系の再生・創出を行うことによって代償(オフセット)すること。→BBOP

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