デジタル大辞泉 「人間」の意味・読み・例文・類語
にん‐げん【人間】
2 ある特定の個人。ひと。「私という
3 人柄。また、人格。人物。「
4 人の住む世界。人間界。世の中。じんかん。
「―五十年下天のうちをくらぶれば」〈幸若・敦盛〉
[補説]書名別項。→人間
[類語](1)
人、人類とほぼ同義であるが、人文科学的なニュアンスをもって受け取られる。本来は仏教用語として世間と同じ意味に使われたが、人界に住むもの、すなわち人を表す日常語として単数・複数の区別なく用いられるようになった。ヨーロッパ語では、人間に相当する語は男性の意をも含むことが多いが、日本語ではそのようなことはない。このことは、両者の間で人間という認識の内容が異なることを示す。一般には動物および神と区別する語であるが、古今東西にわたり人間は多様なものと理解されている。アイヌ語で「アイヌ」とは人間のことであり、台湾の山地系住民の「タイヤル」もタイヤル語で人間を表す。このような事例は世界各地でみられるが、彼らがかつて広大な地域に散在し、生活習俗を異にする集団同士が接触する機会がきわめて少ない状態に置かれていたことを考えれば、自称民族名すなわち人間ということは当然である。
私たち自身をも含む「人間とは何か」については古来多くの思想家が論じた。そこでは、人間が動物の一種であり、直立二足歩行することは自明の事実とされており、それ以上の特性をもって人間を規定しようとしている。「英知人Homo sapiens」「工作人H. faber」「言語人H. loquens」「政治人H. politicus」「経済人H. oeconomicus」「宗教人H. religiosus」「芸術人H. artex」「魔術人H. magicus」「遊戯人H. ludens」などは、いずれも人間の特性の一面を物語っている。
パスカルは「人間は考える葦(あし)である」として、人間の弱さと思考の優越性を説いたが、形而下(けいじか)的には人間はけっしてか弱い存在ではなく、多くの動物たちにとり脅威となっている。今日の自然破壊にみるまでもなく、後期旧石器時代以降、人間は多数の生物種を絶滅、またはそれに近い状態に追い詰めてきた。それというのも、武器や火の使用ばかりでなく、優れた知能に由来する激しい攻撃性の展開の結果であったといえる。このため人間は「食肉類の特性をもつ霊長類」とみなされる。殺人、拷問、戦争などの実例から、人間ほど残忍な動物はいないといわれながらも、他方、ほとんどの動物が利己的にふるまうなかにあって、人間は利他的にも行動することが可能で、日常的に他人に尽くし、弱者を扶助愛護する唯一の動物である。多くの動物では老いて生殖能力のないものは死んでいくが、老人は社会の保護により生存し、その知恵と経験をその社会に十分に生かす。そこにヒューマニズムの根源の姿をみいだすことができる。
自然選択は人間社会においては部分的に作用する。人間は人間のつくった環境のなかで育ち、生きるため、その属性はしばしば自己家畜化で説明されるが、家畜とは異なり、人間は主体性を維持する。人間は技能習得や知能発達のため、その社会特有の形で教育を受ける。したがって生得的な性質のみを維持して成人することはない。人間は一定の価値観をもつよう期待され、その身体も生活も彼が居する社会の文化の影響を受け、着衣を強制される。人間は不自然であることが自然である動物といわれる。
人間は周囲の物体を選んで、これを加工して道具をつくる。道具なしでは人間は生存することができない。人間が人間として生きるためには人間関係の維持がたいせつである。人間の社会は夫婦および家族を基本単位とし、他方いずれの社会も近親相姦(そうかん)を忌避する。また人間の社会は言語をもつことにより、今日のように発展した。また、人間は言語を通して思考することが多い。とくに文字の有無によって人間の社会は未開と文明に分けられてきた。なお人間という語は人柄の意を含む。このことは人間における精神性の重要さを示唆している。
[香原志勢]
文芸雑誌。1946年(昭和21)1月から51年8月まで67冊と別冊3冊、増刊一冊を発行。鎌倉在住の作家久米正雄(くめまさお)、川端康成(やすなり)、高見順らの始めた貸本屋から生まれた出版社である鎌倉文庫が発行所(50年から目黒書店に移る)。木村徳三編集。戦後文学の出発点として文芸の復興を目ざし、宇野浩二(こうじ)『思ひ草』、正宗白鳥(まさむねはくちょう)『人間嫌ひ』、横光利一(よこみつりいち)『微笑』など既成作家の作品が発表されたほか、織田作之助、三島由紀夫、武田泰淳(たいじゅん)らの新人を紹介、さらに混迷する思想状況を立て直そうとする論文も数多く掲載された、戦後の代表的文芸誌。
[田沢基久]
『木村徳三著『文芸編集者 その跫音』(1982・TBSブリタニカ)』
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
1946年1月鎌倉文庫から発行された月刊文芸雑誌。大正期,里見弴,久米正雄らが発刊した同人雑誌《人間》の誌名を踏襲して創刊。戦時中,久米正雄,川端康成,高見順ら鎌倉在住の作家が蔵書を持ち寄り開業した貸本屋が鎌倉文庫の前身で,第2次大戦後,製紙会社と提携して出版社となり,社を東京に移して一時活発な出版活動を行った。とくに木村徳三を編集長とする《人間》は,多くの新人に舞台を提供して戦後文学の生誕に大きな役割を果たした。母体の経営破綻で,50年1月,発行元が目黒書店に移ったが51年8月号で廃刊。全68冊,別冊3冊。
執筆者:海老原 光義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報
…その問題意識は,《実体概念と関数概念》(1910)にまでさかのぼるというが,実際にはやはり第1次大戦による理性信仰の動揺・崩壊を契機として確固たるものとなったとみられる。つまり,ここにおいて従来の認識批判の対象とされた悟性認識の場面だけでなく,言語・神話・宗教・芸術等々,広範な文化諸領域にわたる〈シンボル形式〉の具体的な解明,〈理性的動物〉ならぬ〈シンボル的動物〉としての人間の文化についての哲学的究明が彼の中心問題としてとらえられることになったのである。 30年にはハンブルク大学総長にも選出されたが,33年ナチスの政権掌握後には亡命を余儀なくされ,まずイギリスのオックスフォードへ,次いでスウェーデンのイェーテボリへ,そして41年にはアメリカに渡り,イェール大学,コロンビア大学で教えた。…
※「人間」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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