異所性ADH産生腫瘍

内科学 第10版 「異所性ADH産生腫瘍」の解説

異所性ADH産生腫瘍(異所性ホルモン産生腫瘍)

(3)異所性ADH産生腫瘍(ectopic ADH-producing tumor)
 異所性ADH産生腫瘍からADHが過剰に分泌され,希釈性低ナトリウム血症,低浸透圧血症,尿中Na排泄亢進のため,水中毒症状を呈し,ADH不適合分泌症候群(syndrome of inappropriate secretion of ADH:SIADH)をもたらす.腫瘍随伴内分泌症候群としては高カルシウム血症についで頻度が多い.異所性ADH産生腫瘍のうち肺癌が全体の約80%を占め,そのうち約90%は小細胞癌である.摘出組織にADHのmRNAが確認されないことも多く,肺癌患者でのSIADHはすべてが腫瘍のADH産生によるものではなく,腫瘍の迷走神経圧迫によるADH分泌抑制の解除や増大した腫瘍による静脈還流の不足から左心房容積受容体を刺激するためにSIADHをきたすこともある.病態,症状,治療は【⇨12-3-4)】項を参照.[中里雅光]
■文献
Brownlee M, Aiello LP, et al: Complications of Diabetes Mellitus. In: Williams Textbook of Endocrinology, 12th ed (Melmed S, Polonsky KS, et al), pp1462-1551, Saunders, Philadelphia, 2011.
Gagel RF: Endocrine manifestations of tumors: ectopic hormone production. In: Cecil Textbook of Medicine, 23rd ed, pp1047-1050, WB Saunders, Philadelphia, 2009.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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