家庭医学館 「ADH分泌異常症」の解説
えーでぃーえっちこうりにょうほるもんぶんぴついじょうしょう【ADH(抗利尿ホルモン)分泌異常症 Syndrome of Inappropriate Secretion of ADH (SIADH)】
必要もないのに、脳の下垂体(かすいたい)の後葉(こうよう)という部分から、腎臓(じんぞう)にはたらいて尿量を抑えるホルモン(ADH)が分泌され、尿の出が悪くなる病気です。
このため、水分が体内にたまり、いわば体内に水がだぶついた状態になります。
体重は増えますが、電解質(でんかいしつ)(ナトリウム、カリウム、リンなどの塩類)の水分に対する割合は小さくなっているので、腎臓病(じんぞうびょう)のときのようにむくみ(浮腫(ふしゅ))はおこりません(塩分の摂取を制限する必要もありません)。
頭痛、吐(は)き気(け)、嘔吐(おうと)、めまい、不安、昏睡(こんすい)など、水中毒(みずちゅうどく)(水が体内に入りすぎた状態)と同じ症状が現われます。
症状がひどくなると、生命の危険もあります。
[原因]
下垂体の後葉のはたらきが異常になったり、下垂体以外にADHの分泌をうながす腫瘍(しゅよう)ができたりしておこります。
[検査と診断]
血液中のナトリウム濃度の低下、尿に排泄(はいせつ)されるナトリウムの量が多いことなどから診断します。
[治療]
まず、飲料や食事などから摂取する水分を1日700~1200mℓに抑え、体重を2~4キロ減少させます。
ADHの分泌をうながす腫瘍が明らかな場合は、その腫瘍を取り除く手術をします。
一時的にADHの分泌が異常になることも多く、症状を的確につかんで、水分の制限などの処置を行なうことがたいせつです。