日本大百科全書(ニッポニカ) 「直接大気回収」の意味・わかりやすい解説
直接大気回収
ちょくせつたいきかいしゅう
Direct Air Capture
大気中に0.04%程度の濃度で存在する二酸化炭素を大気中から直接分離・回収して除去する、二酸化炭素排出削減技術の一つ。英語の頭文字をとってDACと略称する。大気中にすでに存在している二酸化炭素を除去して減少させることができるため、ネガティブ・エミッション技術の一つに位置づけられている。なお、大気中から二酸化炭素を回収して地中や海底下に閉じ込め除去するために、回収済みの二酸化炭素を貯留するCCS技術と組み合わせる場合もあり、直接大気回収貯留ということでDACCS(Direct Air Carbon dioxide Capture and Storage)と称することもある。
大気中からの二酸化炭素の分離・回収技術としては、化学吸収・吸着法、膜分離法、深冷法などの技術が想定されている。いずれもさらなる技術開発と大幅なコスト削減が不可欠であり、CCS技術もあわせて、今後の実用化には大きな課題がある。
しかし、世界的に脱炭素化の取組み強化が進められ、カーボンニュートラル達成を目ざす国が増えるなか、直接大気回収のようなネガティブ・エミッション技術の導入が不可欠になっている。ヨーロッパなどの主要国でカーボンニュートラルを目ざすエネルギーシナリオでは、温室効果ガスの排出削減は80%程度となるのが普通であり、残りの20%程度の温室効果ガスは直接大気回収などで削減することで排出ネットゼロ(差し引きゼロ)を実現する将来像が描かれている。
[小山 堅 2022年1月21日]