日本大百科全書(ニッポニカ) 「相互需要説」の意味・わかりやすい解説
相互需要説
そうごじゅようせつ
theory of reciprocal demand
国際間で貿易される商品の交換比率(交易条件)は、その商品に対するそれぞれの国の需要の大きさによって決まるとする説。J・S・ミルによって典型的に述べられた。外国貿易は、任意の2種類の商品の国内における交換比率(価格比の逆数)が一国と他国とで異なっている(比較生産費差がある)場合には、国際間の交換比率がそれらの中間にある限り行われるが、それぞれの国で商品一単位当りの生産費が生産量にかかわりなく不変であるとすれば、交易条件は生産費によっては決まらない。J・S・ミルによれば、そのような場合の交易条件の決定は、相互需要に依存する。交易条件は、一国の輸入需要と相手国の輸入需要が相互に等しくなるところに決まり、一国の輸入需要が相手国のそれよりも大きくなればなるほど、その国の交易条件は不利化するというのである。このJ・S・ミルの相互需要説は、のちにA・マーシャルにより考案されたオッファー曲線を用いる分析によって精緻(せいち)化された。
[志田 明]