日本大百科全書(ニッポニカ) 「石槨墓」の意味・わかりやすい解説
石槨墓
せっかくぼ
中国の東北部を中心に構築された墓であるが、石棺墓、石室墓との区別はかならずしも明確にされていない。槨とは木棺など遺体を納める棺と副葬品を収容する空間を形成するものであって、直接遺体を安置していれば、規模が大きくても石棺墓というべきであろう。山東省の沂南(きなん)県では8室からなる木造建築を模した構造をもつ墓が発見されているが、これなどは石室墓とよぶべきだという意見がある。石槨墓の典型的なものとしては、遼寧(りょうねい/リヤオニン)省寧城県の西周~春秋時代につくられたものがある。これは長さ約4メートルの長方形の竪穴(たてあな)を掘り、周囲の壁は礫(れき)を積み重ねてつくったもので、この槨内に木棺と副葬品の青銅器などが収納されていた。この地方では後代まで石槨墓がつくられている。多数の部屋をもつ石室墓は、後漢(ごかん)の時代に盛行し、墓門や墓室の壁面に多様な画像の刻まれているもの、便所をつくってあるものなどがある。また石槨、木槨、塼(せん)槨の組合せによる墓もみられる。
[寺島孝一]