死者にそえて葬る品物をすべて副葬品というが,その性質は少なくとも3種に分かれる。(1)遺骸に直接に着装する衣服,装身具,武器の類。ただし,死亡時の服装のまま葬る場合と,死後にあらためて着装する場合とがあり,後者には,日常用のほかに,死者特有の服装もありうる。(2)生前における死者の所有物を墓中に置くものであって,装身具,武器,工具,容器,調度品など多種にわたり,そこに儀礼的な解釈が生じてくると,新調の品物を加えることもある。(3)葬儀に使用した品物をそのまま墓中に置くもので,墳墓の造営や遺骸の運搬に使用した品物,供物とその容器,奉納物,荘厳具などのほか,死者が冥界で使用すると信じた仮器の類をもふくむ。さらに死者の所有品であっても,それを墓中に置く場合に,一部を破損するなどの呪術的な処置をほどこすことがある。また,殉葬した人・馬・犬などの着装物のように,単なる品物のみの副葬とは異なるものもある。いずれにしても,副葬品は墓葬に関する習俗を明らかにする資料であるとともに,その年代を推知するに役だつものである。
→古墳文化 →墳墓
執筆者:小林 行雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
死者を埋葬する際に墓内に納められた品物。死者が生前使用したり所有していたと考えられるもののほか、埋葬用に特別につくられたものや、死後の世界で使用するためと考えられるものがある。これらのうち有機質の布、紙、木などは腐食するため、われわれが知ることのできるものは限られている。
副葬品の種類や量は時代や地域によって差がある。縄文時代には副葬品はほとんどみられず弥生(やよい)時代になると西日本の甕棺墓(かめかんぼ)や石棺墓のなかに鏡、玉、青銅器などの副葬品をもつものが現れ、古墳時代になると鏡、装身具、石製品、武器、武具、馬具、農工具、土器など多種多様な品物が、種類や量を異にしながらもほとんどの古墳に副葬されるようになる。しかし、歴史時代以降は副葬品はあまりみられなくなる。副葬品の内容の違いは、被葬者の年齢、性別、身分などを反映したものであろうし、時代による葬送観念の変化を表していると考えられる。
副葬品の置かれた場所もさまざまで、墓室内であっても、棺内のみの場合、棺内と棺外に分かれる場合があり、墓道や墓壙(ぼこう)上に置かれたり、ときには副葬品専用の埋納壙や部屋を設けたりすることもある。
副葬品は、墓の築造年代、当時の工芸技術水準、風俗習慣、社会構造、葬送観念などを知る手掛りとなる。
[望月幹夫]
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死者にそえて墓に埋めたものの総称。死者の属した時代や地域・社会・階級,あるいは死者の属する集団の文化的伝統などを敏感に反映する。「文字の無いところ,墓が歴史を物語る」というのはこの故である。縄文時代は装身具や呪術的なものがおもに副葬され,弥生時代には青銅武器や鏡など,死者の社会的地位を誇示するものがみられる。古墳前期には鏡・鉄製武器や石製品などが多数副葬され,死者が隔絶した地位にあったことを示す墓がある。古墳後期には土器や馬具など日常品が多くなる。
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【前期の古墳文化】
古墳時代の前期においては,氏族の首長はまだ,かつての司祭者としての性格を,完全には脱却していなかったようである。古墳の副葬品から判断すると,彼らが所持していたもののなかには,実用的な武器や装身具のほかに,鏡や碧玉製腕飾や,特殊な形態の碧玉製品などの,宗教的・呪術的な用途をもったものを多くふくんでいる。鏡が宝器としての取扱いをうけていたことは,古く輸入した中国鏡を,数世紀にわたって伝世している事実からも推察できるが,中国鏡ばかりでなく,それを参考にして日本で作り始めた仿製鏡(ぼうせいきよう)も,新しく首長層の所有品のうちに加わるようになった。…
…具象的な表現に関しては,現世における死者の生活や活躍ぶりをそのまま来世にもちこむ思想の反映,王を頂点とする官僚体制をそのまま来世で維持することの表現,死者を守るための表現等々の解釈ができる(壁画墓,装飾古墳)。
[副葬]
死者に添えて墓に埋める品物を副葬品(ふくそうひん)と呼ぶ。墓前に供えた食料や食器は供物と呼ぶが,それを墓に入れれば副葬品である。…
…先秦時代の古典でしばしば言及され,現実生活で用いる正器,祭器に対して貌器(ぼうき)(形をかたどるもの),鬼器(死者のための器)と理解され,凶器,蔵器,秘器などとも呼ばれ,現代の中国考古学でも踏襲されている。明器は時代によって内容構成と表現方法を異にしながら,俑(よう)とともに副葬品として古代から明・清時代まで長く行われた。それには実際の器物が視覚的に表現されており,人や禽獣の形をかたどった俑(動物を土でかたどったものを泥像ともいう)あるいは壁画,画像石などとともに,往時の生活風俗を知るうえで貴重な資料になっている。…
…孔子は芻霊(すうれい)(草人形)を用いることを善しとし,人を写実的に描写する俑を用いることに反対した(《礼記》檀弓(だんぐう)下)。殉葬の人にかえて人形を埋葬することから出発したようであるが,時代が下るにしたがって鳥獣が加わり,明器とともに墓の不可欠な副葬品として明・清時代まで長く行われた。俑は各時代の風俗を敏感に反映しており,服飾や習俗を研究するうえで重要な資料であるとともに,美術的にもすぐれたものが多い。…
※「副葬品」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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