磁束量子(読み)じそくりょうし(英語表記)flux quantum

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「磁束量子」の意味・わかりやすい解説

磁束量子
じそくりょうし
flux quantum

超伝導体の環を磁束が貫いているとき,磁束 ( n整数) で量子化され,φ0h/2e ( hプランク定数e は電子の電荷) を磁束量子という。これは 2.067851×10-15Wb に相等する。超伝導では巨視的スケールで量子力学的状態が実現していて,巨視的な数の電子対が同一の量子状態にあり,巨視的な量である密度波動関数の2乗,電流は波動関数の空間的勾配によって記述される。環を1周したときの位相の変化は,2π の整数倍しかとれないので,環を貫く磁束は量子化される。磁束の量子化は F.ロンドンによって指摘され,のちに実験的に観測された。これは,超伝導が巨視的スケールでの量子状態の現れであること,φ0分母e でなく 2e なのは電子が対になっていることを示し,BCS理論の重要な検証となった。第二種超伝導体に現れる渦糸も磁束量子である。高感度磁束計 (→スクイド ) は基本的には磁束の量子化を利用したものである。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

知恵蔵 「磁束量子」の解説

磁束量子

磁力をもたらす磁束を糸状1本、2本とばらしたときの最小単位。磁力線イメージで思い描ける。超伝導状態の物質は弱い磁場侵入を阻む(マイスナー効果)が、第2種超伝導体と呼ばれるものでは、磁場がほどほどに強いと、ばらばらの磁束を通す。これが量子化された磁束の一例だ。このとき、それぞれの周りに超伝導電流が渦のように流れる。

(尾関章 朝日新聞記者 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android