磁束密度または磁気誘導をその方向に垂直なある面積について積分した量をいう。単位はCGS単位系ではマクスウェル(記号Mx)、MKS単位系またはSI単位系(国際単位系)ではウェーバー(記号Wb)である。コイルの中を通過する磁束が時間とともに変化すると、その変化の割合に比例した電圧がコイルの両端の間に生じる(電磁誘導の法則)。その電圧の向きは、それによって流れる電流の生ずる磁場が磁束の変化を妨げるような向きである。これをレンツの法則という。
磁束は永久磁石またはコイルに流れる電流によってつくられる。軟鉄または軟磁性体でつくった一周回路に磁束を還流させるとき、この回路を磁気回路といい、電流回路と比較すると、永久磁石または電流の流れているコイルは電池に、また磁束は電流に対応する。磁気を利用する装置では、一般にこのような磁気回路が使われている。
磁束の最小単位を磁束量子といい、その値は2.07×10-15Wbである。スクイッド(SQUID)とよばれる精密磁束計は、超伝導線でつくった回路の一部の接合部(ジョセフソン接合という)を通って電子対(つい)(クーパー対という)が通過するとき、回路を通過する磁束が磁束量子だけ変化することを利用して、その数を数えて、磁束を精密に測定する装置である。
[近角聡信]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
閉曲線Cを縁とする曲面Sの任意の点の法線方向の単位ベクトルをn,その点の磁束密度をBとするとき,
Φ = ∮(B・n)dS
で定義される量Φを,その閉曲線をつらぬく磁束という.ここに,積分は曲面Sについて行う.しかし,
div B = 0
であるから,Φは閉曲線Cだけで決まり,曲面Sの取り方には無関係である.磁束の単位は,国際単位系(SI単位)ではウェーバ(記号 Wb)であり,ガウス単位系ではマクスウェル(記号 Mx)で,
1 Wb = 108 Mx
である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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