勾配
こうばい
(1)数学用語 傾斜面の傾きを示す度合いを勾配という。水平面と傾斜面があるとき、直角三角形をその斜線が傾斜面に沿うようにとり、勾配を、底辺に対する垂線の比で表す。すなわち、斜線と底辺のなす角の正接(タンジェント)が勾配である。一次関数のグラフは直線であるが、その直線の横軸に対する勾配は一次関数の一次の項の係数である。これをその直線の勾配という。この場合、勾配のことを傾きともいう。
(2)鉄道では、線路の勾配を、その坂が水平面となす角の正接の1000倍で表している。つまり、勾配が67ということは1キロメートルについて67メートル上がることである。また、屋根の勾配は1尺について立ち上がり何寸で表す。6寸勾配といえば勾配が0.6、角度にして約31度である。
[柴田敏男]
(3)物理学用語 位置に対する物理量の変化率のことを勾配という。たとえば温度の勾配があると、温度の高い場所から温度の低い場所に熱の移動がおこる。これが熱伝導である。物体内の等温面に垂直な方向に移動する熱の量は、温度勾配に比例する。この場合の比例定数を熱伝導率という。熱伝導率は、厚さ1メートルの板の両面の温度差が1℃のとき、1平方メートル当りに毎秒流れる熱量をワットで表したもので、銀では400、水で5~6、常温の空気で0.024程度である。
川底の流れは小さいが、川底から離れると流れが大きくなる。このように流体の速度に勾配があると、流れの速さを一様にしようとする力が現れる。この性質を粘性という。この場合の力も速度の勾配に比例する。
[田中 一]
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勾配【こうばい】
(1)傾きとも。直交座標系でy軸に平行でない直線の式がy=ax+bで与えられたとき,aがこの直線の傾き。この直線がx軸の正方向となす角をαとするとき,αの正接(tan α)がその直線の傾きに等しい。日常的には直線,平面が水平面となす角の正接をいう。(2)ベクトル解析では,微分可能なスカラーΦ(x,y,z)の場が与えられたとき,∂Φ/∂x,∂Φ/∂y,∂Φ/∂zを成分とするベクトルの場をΦの勾配または傾きと呼び,gradΦと書く(グラディエントΦと読む)。
→関連項目演算子|回転(ベクトル)|発散(数学)|ポテンシャル
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こう‐ばい【勾配】
〘名〙
① 水平面に対する傾き。また、その度合。〔
日葡辞書(1603‐04)〕
※米欧回覧実記(1877)〈
久米邦武〉一「此屋の上宇は、〈
略〉勾倍
(コウバイ)寛
(ゆるやか)にして、観台ともなすべしとて」
③
和船の一つ。
町屋形船のうちで最も小さいもの。
紅梅。〔和漢船用集(1766)〕
④ 数学で、直線の方向を示す数。直線がx軸となす角の正接をいう。傾き。
方向係数。
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勾配
こうばい
slope; incline
(1) 傾斜面の傾きを示す度合い。普通には傾斜面が水平面となす角度αの値で示すか,その正接 tan α の値で示される。鉄道では,線路面の水平面に対する傾斜の度合いを,水平距離 1000mに対する高度差で示す。たとえば 1000m行くと 20mの高所に上がる場合は,勾配 20パーミル (記号‰) と呼び,勾配標式には 20と書いて示す。 (2) 数学における勾配ベクトルをいう。
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こう‐ばい【勾配】
1 水平面に対する傾きの度合い。傾斜。また、斜面。「勾配の急な坂道」「勾配を登る」
2 数学で、直線の方向を示す数。直線がx軸の正の方向となす角の正接で表される。傾き。方向係数。
3 物理学で、速度・圧力など物理量の大きさが位置によって変化するときの変化率。ベクトル量で表される。勾配ベクトル。グラジエント。
[類語]傾き・傾斜
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こうばい【勾配】
水平面に対する傾き。傾斜(けいしゃ)の度合い。土地の傾きのほか、住宅の屋根や配管などの傾斜などもいう。
出典 講談社家とインテリアの用語がわかる辞典について 情報
出典 リフォーム ホームプロリフォーム用語集について 情報