こう配とは斜面や坂道の傾きのことである。その傾きの程度の表し方として,斜面と水平面との角がαであるとき,その角の正接(タンジェントtangent)の値,すなわちtanαをその斜面のこう配という。例えば,まっすぐな坂道があって,その坂道を水平距離で測って1000m進む間に60m高くなるならば,その坂道は1000分の60の登りこう配であるという。数学においては〈こう配〉を次のように定義して用いる。
平面上に直交座標(x,y)を定めると,この平面上のy軸に平行でない直線はy=ax+bと一次式で表され,この直線がx軸となす角をαとするとa=tanαであるから,aをこの直線のこう配,傾き(slope,inclination),または方向係数という。微分可能な関数y=f(x)で表される曲線が与えられたとき,その上の点(a,f(a))における曲線の接線はy-f(a)=f′(a)(x-a)で表されるから,その接線のこう配はf′(a)である。
二次元空間R2で定義された偏微分可能な関数f(x,y)に対して,( fx(x,y),fy(x,y))なる成分をもつベクトル値関数(ベクトル場)をfのこう配,またはグラディエントgradientといい,gradfまたは∇fで表す。三次元空間R3で定義された関数f(x,y,z)に対しても,同様にベクトル値関数( fx,fy,fz)をgradfまたは∇fと書いて,fのグラディエントという。
→ベクトル解析
執筆者:伊藤 清三
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(1)数学用語 傾斜面の傾きを示す度合いを勾配という。水平面と傾斜面があるとき、直角三角形をその斜線が傾斜面に沿うようにとり、勾配を、底辺に対する垂線の比で表す。すなわち、斜線と底辺のなす角の正接(タンジェント)が勾配である。一次関数のグラフは直線であるが、その直線の横軸に対する勾配は一次関数の一次の項の係数である。これをその直線の勾配という。この場合、勾配のことを傾きともいう。
(2)鉄道では、線路の勾配を、その坂が水平面となす角の正接の1000倍で表している。つまり、勾配が67ということは1キロメートルについて67メートル上がることである。また、屋根の勾配は1尺について立ち上がり何寸で表す。6寸勾配といえば勾配が0.6、角度にして約31度である。
[柴田敏男]
(3)物理学用語 位置に対する物理量の変化率のことを勾配という。たとえば温度の勾配があると、温度の高い場所から温度の低い場所に熱の移動がおこる。これが熱伝導である。物体内の等温面に垂直な方向に移動する熱の量は、温度勾配に比例する。この場合の比例定数を熱伝導率という。熱伝導率は、厚さ1メートルの板の両面の温度差が1℃のとき、1平方メートル当りに毎秒流れる熱量をワットで表したもので、銀では400、水で5~6、常温の空気で0.024程度である。
川底の流れは小さいが、川底から離れると流れが大きくなる。このように流体の速度に勾配があると、流れの速さを一様にしようとする力が現れる。この性質を粘性という。この場合の力も速度の勾配に比例する。
[田中 一]
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…J.S.ハクスリー(1938)によって提唱された形質の連続変化を意味するこう配clineの一つで,生物の種内または種間変異が地理的な場所により少しずつ異なり,ある形質を測定すると一定方向に連続的な変化を示す現象をいう。日本列島でも,北から南へいくにつれて連続的に変化する多くの例が知られている。…
…ベクトル値関数の微分,積分などに関連する性質を扱うのがベクトル解析である。
[ベクトルの微分と積分]
例えば一つの質点が三次元空間の中を運動しているとき,その位置を表すベクトルr(x,y,z)は時間tの関数としてr=r(t)と表される。ベクトル値関数rの変数tに関する微分は,ふつうの実数値関数のときと同様に,と定義する。も同じように定義すると,はそれぞれ運動する点の時刻tにおける速度ベクトル,加速度ベクトルを表す。…
※「勾配」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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