量子力学的な現象を特徴づける普遍定数。ドイツの物理学者プランクが熱放射の研究のなかで1900年に発見した。hで表す。その値は現在では
h=6.62606896×10-34J・s
とされる。hを2πで割ったħを用いることも多い。プランクは、光と熱平衡にある荷電振動子(振動数ν)を考え、これは光をエネルギー量子hνずつ放出・吸収するとしたが、その物理的理由は明らかにできなかった。アインシュタインは、νを光の振動数としhνを1個の光量子のエネルギーとしてとらえ(1905)、これが運動量hν/cを担うとした。この考えを物質粒子にまで広げ、粒子と波動の二重性を一般的にエネルギーEと振動数の関係E=hνおよび運動量pと波長λの関係p=h/λとしてとらえる端緒をつくったのはフランスのド・ブローイである(1923)。不確定性原理も、この二重性の帰結と考えることができる。量子力学が完成したとき(1926)、これらはすべて次の二つの基本方程式から導かれるものとなった。すなわち、運動量の演算子と座標の演算子の間の正準交換関係
-=ih/(2π)
および任意の力学量Âが時間tとともに変化する方法を定めるハイゼンベルクの運動方程式
dÂ(t)/dt=(2πi/h)[ĤÂ-ÂĤ]
から導かれる。Ĥは系のエネルギーの演算子である。
[江沢 洋]
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物理学における普遍定数の一つで,不確定性原理に含まれて量子力学の領域を特徴づける。hで表され,その値は,
h=6.626176×10⁻34J・s
である。その次元(エネルギー)×(時間)は,また(運動量)×(長さ)などとも書け,一般に作用の次元と呼ばれるので,hを作用量子ともいう。原子内の電子のエネルギーEは10⁻17Jの程度で公転時間tは10⁻16sの程度だから,その積Etはhの程度になる。気体分子の運動量pは室温でp~10⁻24kg・m/sの程度であり,衝突は分子間の距離r~10⁻10mで起こる。これらの積prはhの程度なので,分子の衝突は量子力学の領域に属する。しかし分子の平均自由行路Lは室温・1気圧でL~10⁻3mであり,pL≫hなので分子の自由運動は古典物理で扱ってもよい。プランク定数はプランクの放射則の発見(1901)のとき導入された。なお,プランク定数hを2πで割ったものが用いられることも多く,これはħの記号で示される。
執筆者:江沢 洋
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
量子論における基本的定数.記号h.基本物理定数の一つで,もっとも新しい数値は
h = 6.62606896(33)×10-34 J s( = ×10-27 erg s).
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…こうしたψの固有振動は,それぞれ量子力学的粒子のエネルギー確定の運動を表し,それをしている粒子は定常状態にあるといわれる。定常状態のエネルギーはそれぞれの振動数にプランク定数hをかけたhν0,hν1,……であたえられ,系のエネルギー準位とよばれる。たとえば水素原子の電子のエネルギー準位は-13.6eV/n2と書ける(n=1,2,……)。…
※「プランク定数」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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