種田流(読み)たねだりゅう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「種田流」の意味・わかりやすい解説

種田流
たねだりゅう

近世槍術(そうじゅつ)(素槍(すやり))の一流派。流祖は種田平馬正幸(へいままさゆき)。正幸は、若年のころから槍術を好み、大島雲平吉綱(うんぺいよしつな)の高弟月瀬伊左衛門清信(つきせいざえもんきよのぶ)について、大島流素槍の極意を得た。そして、また中江新八(なかえしんぱち)の中江流ほか、諸流の粋をとって一流をおこし、江戸で教授したという。

 正幸の子市左衛門幸勝(ゆきかつ)のとき、相州甘縄(たまなわ)藩主大河内隆綱(おおこうちたかつな)(松平備前守正信(びぜんのかみまさのぶ))に仕え、その子3代幸忠(ゆきただ)に至る間に、同流の形式作法の体系を固め、伝書を完成した。また士風の振興のため、授業の厳正を図り、他流に先だって雌合(しあい)(試合)に力点を置いたことは、同流の後日の発展につながったものとして大いに注目される。

 また3代幸忠の門に、備中(びっちゅう)(岡山県)新見(にいみ)藩士の平田定右衛門弥吉、豊後(ぶんご)(大分県)森(もり)藩士山岡丈右衛門正臣(じょうえもんまさおみ)という2人の俊才が出て、それぞれ中国・九州の両地方において流勢を広めた。

[渡邉一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android