改訂新版 世界大百科事典 「窰洞」の意味・わかりやすい解説
窰洞 (ようどう)
yáo dòng
中国の華北,中原,西北地方などに見られる,切り立った壁面に掘って作る横穴式住居。中国音の〈ヤオトン〉でも知られる。黄土層の崩れにくい土質を巧みに利用し,夏涼しく冬暖かい利点がある。歴史的にも古く仰韶(ぎようしよう)文化の発掘例があり,宋代や明代の文献にもすでに地方的な住居形式として記述されている。甘粛省東部,陝西省北部,河南省西部が主要な分布地域で,このほか山西省中部,河北省北西部,内モンゴル自治区南西等にも分布する。天然の黄土断崖をそのまま利用して横穴を掘り進んだものが最も簡単で,普遍的に見られる。また,人工的に地坑を掘り下げて中庭とし,そこから四方に横穴を掘り進むものもある。河南省鞏県(きようけん)・洛陽一帯には人工的な中庭を掘り下げて多数の窰を作ったもの,窰の前面を塼(せん)積みで精巧に仕上げたもの,重層の窰をもつものや,地上の建物と組み合わせた例なども見られる。甘粛省一帯の窰洞は他地域と異なり尖頭や放物線アーチ型で,洞内がとくに広く高い空間をもつ。
執筆者:田中 淡
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報