中国北部の地区名。従来は北京(ペキン)、天津(てんしん/ティエンチン)両市と河北(かほく/ホーペイ)、山西(さんせい/シャンシー)、山東(さんとう/シャントン)、河南(かなん/ホーナン)の4省にわたる地域を華北とよんだが、新中国成立後の六大地域区分では河南省は中南区に、山東省は華東区に含まれ、残余の地域に内モンゴル自治区を加えたものを華北区とよぶ。
従来の華北は黄河(こうが/ホワンホー)中流部以東の黄土(こうど/ホワントゥー)高原と、黄河などの河川の運ぶ黄土が二次的に堆積(たいせき)(次成黄土)、陸化した華北平原(黄淮海(こうわいかい/ホワンホワイハイ)平原)を主体とし、東に山東丘陵が横たわる。平野部は小麦、ワタ、コウリャン、大豆、タバコ、ゴマ、ラッカセイなど、黄土高原上は雑穀とワタを産する。また埋蔵量では中国第1位の山西省をはじめ各省とも石炭が豊富である。さらに大港、華北、勝利、中原(ちゅうげん)、南陽など平野部では石油資源も豊富で、渤海(ぼっかい/ポーハイ)でも石油の開発が進んでいる。鉄の埋蔵も各地にみられ、製鉄、石油化学工業のほか各種機械の生産も盛んである。内モンゴル自治区はモンゴル高原上にあり、大興安嶺(だいこうあんれい/ターシンアンリン)を含む。もとはモンゴル族の遊牧地であったが、現在は五原地方や南東部は農業地域化し、また霍林河(かくりんが/フオリンホー)、伊敏河(いびんが)、ジュンガル、東勝などの大炭鉱やエレンの石油、バインオボの鉄など地下資源に富む。塩湖の塩、ソーダを利用する化学工業のほか重化学工業、毛紡織工業、肉・乳加工業などが発達。古都北京、洛陽(らくよう/ルオヤン)、開封(かいほう/カイフォン)をはじめ邯鄲(かんたん/ハンタン)など歴史的都市が多く、安陽の殷墟(いんきょ)、鄭州(ていしゅう)の商代遺跡、満城漢墓、山東の画像石、大同の雲崗石窟(うんこうせっくつ)、周口店(しゅうこうてん)の北京原人洞窟など遺跡にも富む。
[河野通博]
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中国の大地域名。万里の長城以南,大別山脈以北の広義の黄河中・下流域のうち北京,天津両市と河北,山西,山東,河南4省に属する地域を指すことが多く,日本では今もこの範囲を華北と呼ぶ。しかし中国では1949年から54年までは河北,山西,綏遠(すいえん),チャハル(察哈爾),平原などの省と北京,天津両市を管轄する大行政区名に用いられ,また今は北京・天津両市と内モンゴル自治区,河北・山西両省にわたる経済協作区名である。
執筆者:河野 通博
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