化学辞典 第2版 「立体因子」の解説
立体因子
リッタイインシ
steric factor
衝突説にもとづき,反応分子間の衝突回数と実測のアレニウス式の頻度因子とを対応させたときの補正係数で,反応速度定数を,
と表すときのPをさす.ここで,Zは衝突回数,Ea は見掛けの活性化エネルギー,Rは気体定数,Tは絶対温度である.衝突説では,簡単な分子どうしの反応ではP ≅ 1であるが,複雑な分子の関与する反応では特定の方向の衝突のみが反応に有効であるのでP < 1とする.ところが,多くの反応でPの値が求められ,Pは 10-9~109 の広い範囲で変化することが明らかとなり,P > 1の説明が困難となって,衝突説が疑問視されるきっかけとなった.ただし,立体因子の大きさにより,P ≫ 1の場合を高速反応,P ≅ 1を正常反応,P ≪ 1を緩慢反応とよぶ分類は今日でも使われている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報