改訂新版 世界大百科事典 「綏遠省」の意味・わかりやすい解説
綏遠省 (すいえんしょう)
Suí yuǎn shěng
中国の旧省名。1914年,内モンゴルの一部に綏遠特別区がおかれたのが最初で,28年,省に改められ,現在の内モンゴル自治区のウランチャプ(烏蘭察布)盟,伊克昭盟,バヤン・ノール(巴彦淖爾)盟東部とフフホト(呼和浩特)市,包頭(パナトー)市等を管轄した。省都は帰綏つまり現在のフフホト市である。54年廃止されて,内モンゴル自治区に編入された。いわゆるオルドス地方にあたり,庫布斉,毛烏素等の砂漠もあるが,陰山(大青山)山脈の南側には,黄河沿岸に広い谷地が開け,とくに五原県を中心とする後套地区は黄河の水を引いて灌漑農業を行う広大な農地が開発され,農業生産性が高く,傅作義(ふさくぎ)の率いる地方軍閥の強固な拠点となっていた。包頭と帰綏との間にも民生灌漑区が建設され,ともに本省の重要な農業区であった。陰山以北のモンゴル高原上は牧草の繁茂する草原地帯で,モンゴル族による遊牧が行われていた。主要都市としては帰綏(帰化城と綏遠の双子都市),包頭のほか集寧(平地泉)があり,いずれも農畜産物の集散が行われていた。
執筆者:河野 通博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報