改訂新版 世界大百科事典 「繊維素溶解」の意味・わかりやすい解説
繊(線)維素溶解 (せんいそようかい)
fibrinolysis
生体には,生体内で血液凝固の結果析出した繊(線)維素(フィブリン)を処理する能力がある。一つは,食細胞や顆粒球による処理であり,他は血漿中のプラスミノーゲンの活性化によって生ずるタンパク質分解酵素プラスミンによる分解である。後者が繊維素溶解といわれるもので,生体内ではこちらが主と考えられている。繊維素が析出すると,プラスミノーゲンと,血管壁から遊離して循環血中を流れているプラスミノーゲン活性化酵素が繊維素に吸着され,繊維素分子上に両者が濃縮され,そこで効率的なプラスミノーゲンの活性化が起こる。生じたプラスミンが繊維素を分解する。一方,これらの反応は,血中の阻止因子α-2-プラスミンインヒビターによって阻止されていて,普通は繊維素溶解の促進と阻止の両反応の平衡状態が保たれている。ところが,どちらかに極端に傾くと,出血傾向あるいは血栓形成傾向となる。阻止因子の先天的欠損による出血傾向は,その典型的なものである。
→血液凝固 →出血
執筆者:青木 延雄
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