繊維素溶解(読み)せんいそようかい(その他表記)fibrinolysis

改訂新版 世界大百科事典 「繊維素溶解」の意味・わかりやすい解説

繊(線)維素溶解 (せんいそようかい)
fibrinolysis

生体には,生体内で血液凝固の結果析出した繊(線)維素(フィブリン)を処理する能力がある。一つは,食細胞や顆粒球による処理であり,他は血漿中のプラスミノーゲンの活性化によって生ずるタンパク質分解酵素プラスミンによる分解である。後者が繊維素溶解といわれるもので,生体内ではこちらが主と考えられている。繊維素が析出すると,プラスミノーゲンと,血管壁から遊離して循環血中を流れているプラスミノーゲン活性化酵素が繊維素に吸着され,繊維素分子上に両者が濃縮され,そこで効率的なプラスミノーゲンの活性化が起こる。生じたプラスミンが繊維素を分解する。一方,これらの反応は,血中の阻止因子α-2-プラスミンインヒビターによって阻止されていて,普通は繊維素溶解の促進と阻止の両反応の平衡状態が保たれている。ところが,どちらかに極端に傾くと,出血傾向あるいは血栓形成傾向となる。阻止因子の先天的欠損による出血傾向は,その典型的なものである。
血液凝固 →出血
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の繊維素溶解の言及

【血液】より

…続いて血漿の中にある凝固因子(12種類)が膠原繊維との接触や組織液の混入により活性化されて連鎖反応をおこし,最終的には可溶性のフィブリノーゲンが不溶性のフィブリン(繊維素)となって網目構造が形成され,強固な血液凝集塊(血栓)をつくって出血を止める。しばらくして内皮細胞が再生し血管壁の修復が完了すると,血漿に含まれている繊維素溶解物質が活性化され,役割を終えた血栓を溶かし(繊維素溶解),血液の流れが正常状態に戻る。凝固因子や血栓を溶解する物質は,平素は作用を発揮しない不活性の前駆物質として血漿中に存在し,必要なときだけ活性型になって止血作用を営んでいる。…

【止血薬】より

…多くの止血薬は,低下した血液凝固機能を補強するため,あるいは血管の抵抗性を強めるために全身投与が行われるが,表面出血を抑えるために局所に適用するものもある。作用機序のうえからは,血液凝固促進薬,繊維素溶解系阻害薬,血管強化薬などが含まれる。(1)血液凝固を促進する薬物 ビタミンKはナフトキノン誘導体で,天然にはK1(フィトナジオン)とK2が存在し,K3(メナジオン)は合成薬である。…

※「繊維素溶解」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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