日本大百科全書(ニッポニカ) 「脊椎分離すべり症」の意味・わかりやすい解説
脊椎分離すべり症
せきついぶんりすべりしょう
脊椎骨の後部にある上下の関節突起の中間部(関節突起間部)で骨性連絡が離断した状態を脊椎分離症といい、その分離部から椎体が前方にすべり出すのが分離すべり症である。分離症の発生率は約5%で、下部腰椎、とくに第5腰椎に多く(約80%)みられる。原因は不明であるが、先天性要因と反復外力による疲労性骨障害が重要視されている。X線診断が不可欠で、椎体の前後径に対して5%以上のずれがあれば、すべり症と診断される。X線像で分離が認められても無症状のものがかなりある。主症状は腰痛、臀部(でんぶ)痛、下肢痛などで、一般の腰痛疾患と同様の症状がみられ、とくに特徴的なものはなく、椎間板ヘルニアを合併することもあり、根性坐骨神経痛(こんせいざこつしんけいつう)を伴うこともある。
一般の腰痛治療法に準じた保存的治療が行われる。疼痛(とうつう)が激しい場合は臥床(がしょう)安静が必要である。消炎鎮痛剤や筋弛緩(しかん)剤などが投与される。体操療法は保存的治療法の主体をなすもので、日常生活面では腰椎の過負担を避けるように心がける。軟性コルセットを用いたり、各種温熱療法や腰椎牽引(けんいん)療法なども行われる。なお、手術法としては脊椎固定術がある。
[永井 隆]