大学事典 「自主講座」の解説
自主講座
じしゅこうざ
voluntary course
学生が正規に登録している授業科目以外に,一般市民にも開放されている独自の講座のこと。公害問題に取り組んでいた化学者の宇井純(1932-2006)が,1970年に東京大学工学部の教室を借りて開講した夜間講座「公害原論」が早い時期のものとして知られている。その後宇井の運動に影響を受け,原子力グループ,反公害輸出センター,大学論,「グループ水」(環境問題)などの自主講座が設置され,それまでの「象牙の塔」的な大学のあり方を改革する先駆的拠点となった。初期の自主講座と呼ばれるものは,学問や科学技術のあり方を問いかける社会的な問題意識の延長線上にあった。しかし今日,自主講座という場合は,学生のみならず,広く一般市民に開かれた生涯学習的な意味合いの講座を指すようになり,大学と地域社会をつなぐ中継地の役割を果たしている。講座の多様化にともない,担当講師も大学の外部から招かれる場合もあり,大学講義の輪講制の雛型となった。
著者: 松浦寛
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報