日本大百科全書(ニッポニカ) 「般若心経秘鍵」の意味・わかりやすい解説
般若心経秘鍵
はんにゃしんぎょうひけん
仏教書。一巻。空海の著作。『般若心経』に対するわが国最初の注解書で、密教の立場から、大般若菩薩(だいはんにゃぼさつ)の瞑想(めいそう)世界を説いた経典であるとする。序に次いで、本文は(1)人法(にんぼう)総通分、(2)分別諸乗分、(3)行人得益(ぎょうにんとくやく)分、(4)総帰持明(じみょう)分、(5)秘密真言(しんごん)分に分ける。とくに(5)では最後の般若波羅蜜多(はんにゃはらみった)の呪(しゅ)を声聞(しょうもん)・縁覚(えんがく)・諸大乗・秘密乗(密教)と、これらの4種の教えの究極的な悟りに分けて説き、顕教(けんぎょう)の『般若心経』も解釈によって密教経典となると述べ、結びで密教の悟りの世界を説く。
[宮坂宥勝]
『勝又俊教編『弘法大師著作全集1』(1968・山喜房仏書林)』▽『宮崎忍勝著『般若心経と心経秘鍵に聞く』(1976・教育新潮社)』