改訂新版 世界大百科事典 「色素希釈法」の意味・わかりやすい解説
色素希釈法 (しきそきしゃくほう)
dye dilution method
循環動態を検査する一方法。血管内を流れる血液に色素を1回急速注入または持続的に注入し,血流によって希釈される変化過程を下流で連続的に観察することによって,血液の流れの状態を測定しようとする方法である。最も多く用いられるのは1回急速注入法で,心臓,肺血管をはさんで注入部位を腕の末梢静脈,記録部位を末梢動脈として実施する。色素は毒性がなく,化学的,光学的な変化を受けにくいインドシアニングリーンが用いられる。記録部位ではキュベットcuvetteと呼ぶ小さな薄い容器(セル)に血液を一定速度で吸引し,色フィルターをつけた光電比色計によって色素希釈曲線を連続的に記録する。また耳介(耳たぶ)をセルにみたてて耳介を通過した後の変化を観察する簡便法(イアピース法earpiece methodという)もある。本法により,心拍出量,心臓通過時間,先天性心臓病に伴う心臓内の異常な短絡および心臓弁膜症に伴う逆流の程度をおおまかに知ることができる。
執筆者:柳沼 淑夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報