改訂新版 世界大百科事典 「茶酒論」の意味・わかりやすい解説
茶酒論 (ちゃしゅろん)
Chá jiǔ lùn
中国,唐代の進士王敖(おうごう)撰。1巻。開宝3年(970)写本などを,大英図書館(スタイン本)やパリ国民図書館(ペリオ本)で見ることができる。茶と酒とがこもごも出てきて,それぞれの徳を述べ,最後に水が出てきて仲裁しめでたく納めるという内容。短編ながら,日本の文芸にも少なからぬ影響を及ぼした。その一つ,《酒茶論》は,妙心寺53世蘭叔玄秀の作。花間に筵を開いて酒を飲む忘憂君(ぼうゆうくん)と,松辺に茶を喫する滌煩子(じようはんし)とが,交互にその徳を述べ論じ合い,勝負なしでめでたく納まるという内容。赤木文庫蔵本(室町末期写),岐阜県乙津寺蔵本(蘭叔自筆,一軸,天正4年奥書)などが存する。同名の御伽草子は寛永(1624-44)ごろの刊本があり,古田織部のもとで茶会が催され,下戸と上戸の争論から宇治,栂尾(とがのお)の茶と大和の諸白(もろはく)とが合戦をし,諸々(もろもろ)の魚鳥が談合評定して双方無事和合するという,滑稽な擬古物の体裁をとり,以下《酒餅論》《御茶物語》などへと展開してゆく。
執筆者:徳江 元正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報